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47話のゾーラのユミルは「人じゃなかった」発言を「普通じゃなかった」に変更しました。
警戒心が強い割にあけすけに話すぎているのでもうちょっと直したいところ。
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もう一度仮縫いを済ませ、形は何とかなったという事でマナーの採点が始まった。
ほとんど目上の
従士の教育をされているので基本は知っていたのだが、自分が貴族側に立つとまったく印象が違う。
その他にも細かく注意点を言われたけど覚えられるかとても不安である。
その後はオーキンドラフ様に書く手紙の
伝えたい内容を
結局、少し変えるくらいで手本を丸々使わせてもらい、丸めてリボンで縛ってから
この皮紙も高いんだ、たった一枚でパンが何個も買える。
書き損じたら削って書き直すのだけど、インクは乾いていないからやりづらいし、削った所は
その上である意味恋文の様な物を、見られながら書くのだからとても恥ずかしい。
急ぎなので数カ月ごとに来る商人ではなく、騎士爵家の従士にベガルーニ様の手紙と共に届けてもらう事になる。
返事が来たら準備を整えて出発することになるんだけど、まだ国境にいる可能性もあるのでどうなるかは分からない。
それから数日、家族は忙しそうにしているのだけど私はマナーの授業と訓練以外やる事が無い。
貴族になったからか雑用を押し付けられる事も無く、村の住人も距離感が分からないのか何処かよそよそしい感じだ。
妹達も10歳を越えて、自分の仕事をしているので邪魔は出来ないし、仕方が無いから砂鉄集めをしながら散歩をして村を回っている。
私以外は何も変わっていないというのに、疎外感を感じてしまって寂しさを覚えていた。
しかしある時、原因が判明した。散歩をしている時は寄って来ないクソガキ共が、狩りに行くために鎧を着ていると寄って来るので、気になって聞いてみたんだ。
綺麗な服を着てたから、汚したら悪いと思ってたと言われてハッとした。そういえば最近外に出る時は、商人の娘風の綺麗な服を着ていた。
従士見習いの服ではなく、この街に来る商人ですら着ていない街中用の高い服だ。たしかにこんな物を着ているのはこの村ではお屋敷の方々だけで、それだってもっと落ち着いた色合いをしている。
明らかに町娘のお
教えてくれた子供に、お土産を期待していろと約束して森へと向かう。
数人のメンバーと共に森へ入り、奥へと向かう。今日はガチャガチャとうるさい私が一緒なので、ボアかベアを探して歩き回る。
音で鹿は逃げてしまうし、ウルフは美味しくない。巨大蛇は見つけにくい上に戦い難いという訳での選択だ。
嫌だ嫌だと考えたせいか大外れを踏み抜いてしまった。木々の間から
斥候は出していたのだけれど狩人ではなく、戦場から一緒に帰って来たばかりなので、縄張りが変わっていた事に気が付くのが遅れてしまったのが原因だ。
口を大きく開けて
「私が引き付ける!一度下がって様子を見ろ!」
蛇に向かって走り出し、噛みつきを避けた後に弾力のある胴体を斬りつける。深い傷は付けれたけど気にした様子も無く、私に巻き付こうと身をくねらせて来る。
人相手なら攻撃を無視して、ひたすらに斬り付ければ勝てるのだけど、この蛇は本当に厄介なのだ。
ジャイアントボアに噛み付かれても、血さえ流れない弾力のある丈夫な体。切断されても動き続ける生命力。ウインドウルフに巻き付いて骨を粉々に粉砕する筋力。
さらに噛み付かれれば牙にある麻痺毒を流し込まれるが、麻痺と言っても量が多ければ窒息死してしまうので、猛毒と何も変わらない。
その丈夫さ故に、ジャイアントボアにどれだけ追い払われ様と、次の日にはまた小型のボア達の命を狙いに現れるというはた迷惑な奴だ。
魔力を持った魔物では無いので、体当たりを食らってもさほどダメージは無いのだけど、質量が違いすぎて10m以上ふっ飛ばされる。
たとえ全身鎧を着ていようと、相手は何百キロもある丸太の様な物なので、かすっただけでも簡単に吹き飛ばされる。
噛み付きだけは絶対に喰らわない様に、出来るだけ同じ部位を斬り付け続ければ流石の大蛇も飛びかかる事は出来なくなって動きも鈍くなる。
面倒なのはここからだ、人間ならば腕を切断されて縛りもしなければ出血で死ぬのだが、こいつ切断されても部位によっては半日は生きるらしい。
なので出来るだけ頭に近い位置を切り落とし、巻き付かれないように注意しながら細切れにしないと、危なくて近寄ることすら出来ない。
なんせ解体が終わってもまだ首だけで動くのだ。首を切断したのに、麻痺毒を採取しようとして近づいたら噛まれた、なんて事故が度々起こる本当に面倒な魔物なのだ。
「頭には絶対に近づくなよ!巻き付かれたら助けられないからな!」
動きが鈍った事で兵士達も斬り付け始めたけど、こいつはまだまだ元気だ。首を切ろうとする私に噛み付いて来て、なかなか攻撃をさせてくれない。
せめて兵士達の方へ向かない様に牽制を入れながら、何とか深い傷を負わせれば、噛みつく力は無くなって身体をくねらせて丸くなった。
間違って噛まれない様に土魔法で作った棘のある球を口に撃ち込んで、首に向かって全力の一撃をお見舞いする。
見えていた骨の継ぎ目に入った斬撃によって首がだらりと垂れ下がり、次の一撃で完全に切断した。
「流石ですユミル様、これでこの森でも怖いもの無しですね。」
からかうような口調で仲の良い兵士が話しかけて来る。
「さらに奥には何がいるか分かったもんじゃないけどね。こいつがジャイアントパイソンの親玉だろうし、少しは森が安全になると良いね。」
「今度はまたジャイアントボアが幅を効かせるんですかね?元に戻るなら問題は無さそうですけど、狩人は悲しむでしょうね。」
狩りやすい鹿で大いに稼いでいた狩人達だ、またボア達に追い払われたら確かに悲しむだろう。
未だに動く胴体をぶつ切りにして影の部屋に突っ込み、皮を
刃物には弱いけどとても弾力性があって良い革になるのだ。商人に売ればそれなりの金になるだろう。
未だにこちらに目を向けてくる首にビビリつつ、顎を切断して口の内側からナイフを入れる。脳を破壊して止めを刺してやりたいけれど、すぐ下に毒腺があるんだよね。
この麻痺毒は狩人によく売れる。ひと塗りで鹿でもボアでも一矢で倒すことが出来て、生きている状態で倒せるから肉の味もいい。火を通せば毒も問題無くなるので
治療師も使うそうなので商人にも売れるけど、あまり需要は無いらしくて価格はそんなに高くない。毒物は大きな街への持ち込みも厳しいらしいね。
解体はまだしていないけど、肉も大量に取れた。土産を約束した子供が蛇肉も好きだと良いんだけど。
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