035

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強化週間ありがとうございました!

日間、週間共に総合で100位以内に入ることが出来て感激です!

これからもどうぞよろしくお願い致します。

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 先程戦っていた現場に戻ると、馬に乗った騎士が私の兵士達に囲まれて暴れていた。

 慌てて走り寄るが、どうやら通り過ぎた敵兵が迂回やりになるのではなく、強行突破を狙って突っ込んで来た様だ。

 騎士は指示を出しながら歩兵に槍を突き立て、従者が騎士に近づけまいと必死に盾を構えて剣を振り回しているのが見える。


「押し止める意味は無い!受けるな受け流せ!右側を空けてやれ!」


 大声で叫んだ私の声に気がついたのか、私の兵達は陣形を徐々に左へずらす。敵方にも聞こえたのだろう、無理に突破するのを止めて右側へと移動し始め、道が開ければ切り結ぶのを止めて逃げ始めた。


「かたじけない。」


 そう言って通り過ぎようとした騎士に、磁力魔法を使い斧の腹で殴りつける。

 勘違いをさせてしまった様だが、私が通る道を兵士達に開けさせただけだ。動揺した盾持ち達の首をねて、立ち上がろうとした騎士の頭を殴りつけて気絶を狙う。

 奇襲部隊の先陣を切っていた騎士だ、少しくらいは価値のある情報を持っているだろう、騎士がまだ死んでいない事が分かっているからだろう、兵士達が逃げずに必死になって槍を向けてくる。

 兵士達にしたわれる良い騎士なのかも知れないが、残念ながら救いたいという思いは届かせない、2度ほど起きた騎士に追撃をおこない、連れ去ろうとする者を優先して斬りつける。

 敵兵とのすれ違いが終わり、追撃を始めた私の兵士達が後ろから襲いかかる、両陣営に分かれた同じ者を守るための戦いが終わった時には、逃げずに戦った敵兵の数は五十をゆうに越えていた。


 本陣へと撃退に成功した事の伝令を飛ばし、気を失っている騎士にかせをはめる。

 強く殴りすぎたのかへこみ、変形した兜を無理やり外せば、どうも女性だったらしい。よく見れば胸当てにも体型に沿った凹凸おうとつがある。

 血が流れている頭を治療すると、思ったよりも魔力を使うので、もしかしたら頭蓋骨ずがいこつ陥没かんぼつしていたのかも知れない。

 律儀りちぎに主を待って近くにいる女騎士の馬を連れてこさせて、治療の終わった騎士を乗せて手綱たづなを引く。

 馬といい死んでいった従者といい、したわれ過ぎていて何だか悪い事をしてしまったのではないかという予感がひしひしと込み上げてくる。

 この後この女騎士、拷問されて情報を吐かされるんだよなぁ。戦争中とはいえなんだか申し訳無いと思いつつ、倒した貴族の死体を漁って身分が分かる紋章付きの持ち物を集め、陣形を整えて怪我人の治療を始める。

 本陣には伝令を走らせたので、待っていれば増援か交代要員が送られてくるはずだ。

 無事な者を斥候に出して、軽症の者を治して死体から使えるものと遺品を集めさせる。

 重症者には手持ちの薬を使い命を繋ぐ。部隊と一緒に預けられた物なので遠慮無く使わせてもらおう。


「途中伝令から戦闘が終わっている事を聞いた。辺境伯様より増援と交代の命令を受けているので、一度本陣に戻り詳細を伝えるように。」


「了解しました。この場を任せ、ただちに本陣へと向かいます。」


 援軍を連れて来てくれた騎士に、引き継ぎを行ってから交代して本陣へと帰る。

 長く伸び切った敵陣の横っ腹を叩けたのでなんとかなったけど、普通に相手をしていたら援軍が来るまで持ちこたえられただろうか?



「ユミル入ります。」


「うむ、良くぞ撃退した。詳細を報告せよ。」


 本陣のテントに入ると、机を囲んでいる辺境伯様に報告をうながされる。


「はっ、右翼の森にて8列にて進む敵影を発見。隠れる我らに気が付かずに通り過ぎて行ったため、横より襲撃しゅうげきし騎士12名、指揮官1名の討伐に成功しました。

 追撃を行ったところ、さらにもう一部隊が逃げていく所を発見しましたが、追撃を断念し援軍と交代してまいりました。

 また、一人騎士を捕獲ほかくしましたが、頭を強く殴りすぎて頭蓋骨ずがいこつ陥没かんぼつさせてしまったため起きるか不明であります。」


 そう報告すると、証拠として紋章付きの持ち物を横に立つ兵士に渡す。


「騎士一人でよくこれだけの数を倒してくるものだ。兵数に関してはどうだ?森の中ゆえ分かりづらいだろうが、大体で構わん。」


「おそらく最初の部隊が千、続いていた部隊が千の合計2千であったと考えます。

 600を過ぎた当たりで指揮官と騎士が固まっていたため、後続もおそらく同じ陣形だったのではないでしょうか。」


「ふむ、本気で奇襲を考えたわけではなく、伏兵ふくへいが居ないか確認に来てあわよくばといったところか?」


「そうでしょうな、紋章の中に千人長の物を確認いたしましたが、魔法師団の者の紋章はありません。

 もしかしたら後続部隊にいたのかも知れませんが、以前ならともかく今の本陣にこの人数ではただ死にに来るだけでしょう。出来たとしても補給路の分断くらいではないですか?」


 敵の概算がいさんを伝えると、辺境伯様は紋章を確認していた貴族と共に編成の見直しを相談し始めた。


「よし、報告ご苦労だった。砦へ行き部隊に治療を受けさせよ、魔力も無いだろうから今日はもう休んでかまわん。

 それから捕虜も一緒に連れて行け、砦の兵に渡し後は任せよ。」


「ありがとうございます、それでは失礼致します。」


 堅苦しい雰囲気とタバコの煙の充満していたテントを出て、深呼吸をすると兵に指示を出して移動を始める。

 今日はもう休めと言われたので、重症者の治療も手伝おう、浅く斬られただけなら簡単に直るのに、腕や太ももに穴が空いただけで10倍も20倍も魔力を使うのは何故なのか、魔力の消費を減らせないかと考えながら、歩けない者をかついで治療しながら砦に向かうことにした。

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