033
頭の痛い問題を考えるのを止めて、砦への怪我人の輸送を手伝う事にした。婚約を受け入れれば大半の問題は解決する。後はどの選択肢をとっても問題になる、家族仲とか財布の紐をきちんと握れるかだけになるのでとても単純だ。
怪我人を馬車に乗せて砦へと運んでも、治療の内容が変わる事はほぼ無い。飲むだけで傷が回復する魔法治療薬が存在するが、数に限りがあるため放って置いても治る様な者には使わないし、
精々が深手を負った者に使ったり、骨折した者に使って治療期間を短縮する程度だ。兵士を回復して復帰させるのでは無く、死なれると平民がうるさいから死なない程度に治療するのだ。
怪我人が増えれば介護に必要な者が増え、
中にはまた戦場へ行かなくてはいけなくなった事に、多少の
貴族からの評判はいい様だ、また部隊を再編成し手柄を立てに行けるからだ。だけれど自分達で治療しようとする貴族はいない、従士ですらいざという時のために魔力は取って置く物だからだ。
もっとも魔力量と回復速度に自信のある私の様な者でもないと、1人、2人治療したら魔力が無くなってしまったり、そもそも回復魔法が苦手で出来ない者も多いのが平民の魔力持ちなんだけど。
魔力が無くなったら鎧の整備をして過ごす、ベルトが焦げたり切れかかっているのを
銀色に戻ってしまうけど、また余裕があるときに綺麗な黄色一色に染めようと思う
数日後、本隊の先頭が到着すると、相手の本隊も到着し始めたとの連絡があった。とりあえず2万対10万の戦いになる事は無さそうなので一安心と言った所だろうか。
オーキンドラフ様との話し合いも父が泣いたくらいで無事に終わった、私を
本隊が来たことで陣形が大きく変わった。簡単に言えばすでに手柄を立てたお前らは退いていろと言うことだろう。
本陣を守る部隊以外はすべて既存の陣形の前に配置されて、元からいた私達はお払い箱の様な扱いだ。
人数の差もすごいので前は右翼側の端っこにいても森まで数十メートルの距離があったのに、今では手の届く距離に木が生えている。
もっとも、総指揮官は新たに来た第一王子様になったが、会議を仕切っていたのは辺境伯様のままだったので何か話し合いがすでにあったのだろう。
本陣のテントに呼ばれても、余りにも貴族が増え過ぎたために従士は入る事は出来なくなった。会議の声は聞こえるものの一騎士の意見を聞かれる事は無い、寝ないように頑張って立っている事が私の仕事だろう。
と、思っていたら辺境伯様から200の兵を渡されて、森を通る敵を排除しろと命じられた。他にも森に入る部隊はいる様だけど、以前の様な千の奇襲部隊が来たら200の兵で何が出来るというのだろう…。
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