032
ぜひお願いしたいと声をかけてきたのは、派手に着飾っているうえに丸々と太っていて、私の倒した魔法師団の伯爵の様な背格好をした男だった。太っていても不快に思うような顔つきではないし、
婚約したいと言われても、自分で決めることは出来ないし父もこの場にはいない、困ってしまってベガルーニ様の方を向く。
「オーキンドラフ準男爵様ですか、我が領から2つ隣の領ですし直接王都に向かうのなら通ることもある領地です。
悪くは無い話とは思いますがユミルは従士家上がりの騎士です。魔法師団でご活躍されているオーキンドラフ様の魔力量に見合うとは思えませんが。」
私に説明してくれる様に、ベガルーニ様は男の詳細を話してくれる。
「何を言っている、騎士7名と魔力持ちの従者を倒した後に、魔法師団の伯爵まで倒しているのだぞ?魔力量だけなら騎士爵に収まる器ではなかろう。
私は準男爵としても破格の魔力量を持っていると
「だがなオーキンドラフよ、それでは一つの領地に準男爵が二人いることになってしまうぞ、遠方の領地を管理しながらの子育てでは難しかろう?」
「ユミル嬢が
それならば新たな領地は貰わず、私とユミル嬢の子供に準男爵を継がせると約束してくださるのなら十分ではありませんか?辺境伯様としても席が一つ空くのですから悪い話では無いでしょう?」
「そうは言うが、国の領土を広げることも辺境伯としての
ユミルよオーキンドラフはこう言っておるが、その方はどう思っておる。」
私はもう一度ベガルーニ様の方を見るが、軽く頷いただけでこれ以上の手助けは無さそうだ。領地を貰うことに
婚約者探しだって元から父任せだったのだから見た目で判断するつもりも無い、ベガルーニ様も魔法師団で活躍していると言っていたし、仕事も優秀なのだろう。
「私はオーキンドラフ様の申し出を受けようと思います。」
「あい分かった。ならばユミルが準男爵となり、オーキンドラフと婚姻がなった時にはその子に準男爵を継がせる事を認めよう。」
「良かった!受けてくださり感謝致します。詳しいお話は後ほど致しましょう。」
「はい、よろしくお願い致します。」
そう挨拶をして元いた位置に戻ろうとしたが、ベガルーニ様に隣に立てと言われた。すでに貴族になったため従者の位置に居ては駄目らしい。
報奨を受け取るのは私で最後だったらしく、その後はいくつかの指示を出して解散となった。
被害のあった部隊は砦に戻り、治療を受ける様にとのことだったので私達も砦へ戻る事になる。
本陣のテントから離れて自陣の辺りまで来ると、ベガルーニ様が口を開いた。
「ユミルが婚約の話を受けてくれて助かった。正直見た目が好みでは無いだろうから断るかと思っていたぞ。」
婚約!?と父が反応したが今は放置だ。
「領地を
あと領地経営などまったく出来る気がしません。」
「流石の
お前は読み書き計算も得意だという話だし、経営は大丈夫であろうよ。文字が読めぬ者ですらなれるのだからな、まぁ言われていた通り
あのまま領地を貰っていた場合の話だが、戦争に勝っていた場合はここ
負けて砦が盗られて終戦した場合は、後継ぎのいなくなった準男爵家の領地を貰う事になっただろう。」
「え、こんな所貰っても困ります。」
戦場の跡地にはスケルトンなどの
「だろうな、死霊は光の魔法で倒さなければ減ることは無い。
神殿の連中が来てくれるとはいえ、食い物と寝床は用意せねばならないし。戦争で活躍した魔力持ちだ、当然戦力として見られるだろう。
そんな状態で村など育てていられん上に、数十年後にまた戦場になる確率が高い、欲しがる者など物を知らぬ
そんな忙しい訳あり領地なのにも関わらず、どれだけ頑張っても人口千人を越える町に発展出来なければ
国同士が和解して大規模な交易でも始まればチャンスはあるかも知れないけど。長年戦争を繰り返して来た敵国である、期待は出来ない。
「すでに発展している領地を貰うのも微妙だ、
一番楽なのは王家の
先の敗戦で報奨として渡されて、ただでさえ
「つまり婚約を受ければ、
「いや、金を使うのは変わらん。一から村を作って準男爵位を守るか、すでにある村を発展させて男爵位を狙うかでは、同じ使うにしても大きな差があるだろう。」
確かに男爵位を得れば苦労して
あと、既存の領地を貰うともしかして当主となった自分で結婚相手を見つけなければいけないのではないだろうか?送られてくる見合い話の中から書類と噂話だけでまともな人を探し出し、ろくに会わずに婚約するのだ中々に難易度が高い。考えることが多くて段々頭が痛くなってきた…
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