騎士領産まれ、従士の家育ち、振るう刃は両手斧

ガラゴス

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第一章 誕生~

001

 気がついたら赤ん坊だった。短い手足、寝返りすら打てない身体。出来る事と言えば乳を飲み、眠り、オムツが気持ち悪いと泣き叫ぶくらいだ。

 母らしき女性は話しかけてくれるが意味は分からず、余りにも暇すぎて悟りを開くか仙人にでもなりそうだった。

 筋肉を付けるつもりで手足を無駄に動かし、疲れればぐったりとして眠る生活を繰り返していると。ふと、手足を動かした時に体内の温かい何かが一緒に動く事に気が付いた。

 ああ、これが魔力か。と思い付き動かし始める。何かで見た知識では使うか、圧縮し続ければ保有量が上がって最強に成れるのだ。

 何で見たのかは思い出せないがせっかく見つけた新たな暇潰しだ、何が出来るのか試していこう。


 自分が赤ん坊だと言うのがおかしいとは思うのだけど何が変なのかは思い出せない。

 たまに筋肉を付けるだの魔力を動かすだの変な知識を思い付く、どこから得たのかは分からないし気持ち悪くはあるけど考えても仕方がない事は分かって来た。

 こういう事を考えてると眠くなって来て一眠りすると気にならなくなっているのだ、考えるだけ無駄なんだと思う。


 全身に魔力を行き渡らせ、濃度を上げて手足と一緒に動かせる様になる頃には寝返りを打てるようになり、自分の名前がおそらくユミルという事が分かって来た。

 ユミルに続く言葉はご飯とかオムツ、可愛いとかだろう、きっと。可愛いと言われてるといいな。

 よく見かける人間は5人。母と父とおそらく祖父母と姉と思われる子供だ。

 父は朝早くに家を出て夜まで帰って来ないが私を抱き上げてはヒゲ面を擦り付けてくる。

 痛いのでビンタをしてやるのだがニヤケ顔で喜んでいるのでやめる気は無さそう、痛いから本当にやめて欲しい。

 祖父は父と同じくほとんど家にいないが、祖母はよく母と話しながら私と姉の世話をしている。

 姉はまだ1,2歳くらいだろうか母の足に抱き着いていたり、走り出しては転んで泣いている姿をよく見かける。

 私に触れるのはたまにしか許されないのでよく指を咥えてこちらを見ている。


 ハイハイが出来る様になると姉と遊ぶ機会も増えて手を叩く姉に向かってハイハイをするのが日課になった。

 またどこかからハイハイの期間が長いほうが運動神経が良くなるという知識が湧いて来たので姉が飽きるまで付き合う事にしよう。


 祖父は私を構う事はほぼ無いが、たまに祖母に無理矢理抱っこさせられては石像になっている。

 余りにも動かないので身体をペシペシと叩いてみるのだが胸板がすごい。父も筋肉質だがそれ以上に鍛え上げられている。

 祖母に笑われた後、私を取り上げられてホッと息を吐いているが、もう首が据わっているどころかハイハイしているのだしそこまで怖がらなくてもいいだろうに。


 母乳の期間が終わり麦粥むぎがゆや野菜スープを食べさせられる様になったがこの麦粥が美味しくない。

 薄い塩味の野菜スープはまだ食べられるけど大麦だか小麦のこの粥は食べるのがとてもつらい。オートミール、不味い。という知識が湧いて来たけど知ってる、今食べてるもの…


 不味いご飯にも諦めがつき単語で会話が成立する様になってきたが実はまだ魔法が使えていない。

 魔力の濃度は順調に増えているのだが指先から出すことも全身をまとわせることはもちろん、風や水、光に変化させる事も出来ていない。

 最近は考えなくても体内を循環させる事が出来るようになったけど手詰まり状態だ。というか家族の誰も魔法を使っていないんだけど魔力じゃないのかなこれ?

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