天才野球少年は三回裏からベンチウォーマー

よこすかなみ

0 うつ病

 今日もまた、部屋の隅で首を吊っている自分の姿が瞼に浮かぶ。

 ──自殺のイメージトレーニングだ。

 毎日やっているこれは、この世からの避難訓練。

「…………」

 俺はゆっくりと起き上がった。閉じ切ったカーテンが真っ先に視界に入る。外はまだ暗いようだ。

 時計を確認すると、午前三時。

 再びベッドに沈むが、眠気は訪れない。

 やってくるのは、嫌な記憶と後悔ばかり。

 眠れたとしても、どうせ悪夢をみるだけ。

 ──俺が悪いんだ……。

 全部、俺が……。



 中学一年生で、雑誌の取材を受けた。

 野球部の公式戦。無名の弱小校にも関わらず、一試合の中で、ホームランを三本打ち、守備ではダブルプレーに貢献。

 ちょっとした話題になった。

 自分ができることをしただけなので、特に天狗になったつもりはない。

 しかし、よく思っていない先輩もいたようで。


 俺は一部の部員たちから、いじめを受けた。


 退学こそしなかったが、野球部は──数ヶ月後に、辞めた。

 俺の通っていた中学は私立の中高一貫校だったため、エスカレーター式で高校に進学した。

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