妹が悪役令嬢なはずなのですが、既に好感度振り切れてるんですが…?なぜ?

ヒロ

第1話 転生したら悪役令嬢に介護されている件

意識が戻るまでにしばらく時間がかかった。ぼんやりとした視界の中で、見慣れない天井とシャンデリアが目に入る。重厚な装飾が施された天井を見上げながら、自分がどこにいるのか理解できず、しばらくその場に寝転がっていた。


 しかし、ふとした瞬間に全身に電撃のような感覚が走った。


(……俺、死んだんじゃなかったか?)


 確かに記憶しているのは、前世の最後の瞬間。信号を渡る途中で、暴走車に跳ねられたあの衝撃と痛み。意識を失う直前に感じた、まるで全身が砕け散るかのような激痛。その後に訪れた深い闇の中で、何も感じられなかったはずだった。


 だが、こうして再び目を覚ますとは、どういうことだろうか。


「お、お兄様!やっと目を覚まされたのですね!」


 耳に届いたのは、柔らかな少女の声だった。顔をそちらに向けると、そこには美しい少女が涙ぐんで立っていた。彼女は金色の髪を持ち、宝石のような深い青い瞳でこちらを見つめている。その表情には安心と喜びの色が浮かんでいた。


(誰だ、この子は……)


 そんな疑問を抱きつつも、目の前の少女が自分に向かって「お兄様」と呼んでいることに驚きを隠せない。まるで自分がこの世界で彼女の兄であるかのように。


 次第に頭の中に記憶が流れ込んでくる。ここは現代の日本ではなく、どうやら異世界の貴族の屋敷らしい。目の前にいる少女の名前は「エレノア・フォン・クロード」、クロード家の令嬢であり、この屋敷の主人の娘だ。そして——自分はその兄、「レオン・フォン・クロード」という名の貴族の長男だと。


(まさか、転生したってことか……?)


 あり得ない状況に困惑しながらも、徐々に冷静さを取り戻していく。異世界への転生——ありふれたライトノベルや漫画の設定が自分に降りかかるとは、なんとも奇妙なものだ。だが、さらに衝撃的な事実が頭を駆け巡る。


(エレノア……悪役令嬢のエレノア・フォン・クロード!?)


 彼女の名前を思い出した瞬間、全てが繋がった。エレノアは前世で自分がプレイしていた乙女ゲーム「蒼い薔薇が咲く庭で」の悪役令嬢そのものだ。そのゲームの中で彼女は、主人公の恋路を妨害し、数々の陰謀を巡らす冷酷な存在として描かれていた。そして最終的には、その悪行の数々を暴かれ、いわゆる「ざまぁ」されるのがエレノアの役割だった。


 しかし、目の前にいる彼女はゲームで描かれていたような冷酷な悪役令嬢とは違い、心配そうにこちらを見つめるただの少女だ。その瞳に浮かぶ涙が嘘でないことは、兄としての「レオン」の記憶が伝えてくれる。


(もしこのまま放っておけば、エレノアはあの「ざまぁ」される運命を辿ることになる……)


 そう考えたとき、レオンとしての自分の心に不思議な使命感が芽生えた。たとえゲームのストーリーだとしても、目の前の妹が不幸になることを見過ごすわけにはいかない。彼女を救うために、悪役令嬢の未来を変えなくてはならない。


 決意を固めたレオンは、ベッドからゆっくりと起き上がった。エレノアが慌てて支えるように近寄ってくる。


「お兄様、まだ休んでいらしてください。無理をなさらず……」


 その優しい言葉に微笑みながら、レオンは彼女の頭を軽く撫でた。


「ありがとう、エレノア。でも、もう大丈夫だ。これからはお前と一緒に頑張っていくつもりだよ」


 彼の言葉に、エレノアの頬が赤く染まり、その表情に驚きと喜びが入り混じる。


(まずは、妹の心を開かせて、本来の彼女を取り戻させることから始めよう。そして、あの破滅の未来を変えてやる…………………

と思ったけど、エレノアってこんなに兄思いのキャラだったっけ?大丈夫?)


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久々の執筆ですが、モチベが上がる気があまりしないので、前半以降の更新は未定です。

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