第46話 介抱
「ねぇ、本当に大丈夫?」
フウウのノドを、ヤケドさせちゃったかと心配になるあたっち。
『大丈夫です。気にしないでください』
四つん這いになり、特に体を動かすことなく答える武者フウウ。
「うん、それならイイけどね。お饅頭どんどん食べてね」
苦笑いしながら、すすめるあたっち。
『いや、もうお腹いっぱいで』
正座して、お腹をさする武者フウウ。
「そうなの?」
そんなに、遠慮しなくてイイのに。
『はい』
「まぁ、夕飯が食べられなくなってもアレだし」
そう、クニヤスが言うので、
「そうよね。その時に見ればイイね」
もっと、じっくり食べるところが見たい。
『いや、見せないですよ?』
右手を振る武者フウウ。
「まぁまぁ」
「それじゃあ、仏壇に供えるか………ってあれ、またネコが喰ってるな」
クニヤスが、お供え物が減っているのに気付く。
「ホントだ」
今朝は、ちゃんとあったのに。
って、食い意地が張ってて、見てたんじゃないわよ?
「いや、ちょっと待つニャ! それは───」
ネコが、言いかけると、
『シッ!』
武者フウウが、ネコにおおいかぶさる。
「むぐむぐ」
なにも、しゃべれないネコ。
「なんか言った?」
クニヤスが聞くが、
『いや、なんでもないですわ』
武者フウウが答える。
「そう?」
ネコが、体をうねらせる。
『アハッ』
その頃
「ハッ………」
虚無僧ハタノが、目をさますと布団に寝かされていて、傍らにはグミちゃんがいる。
「あぁ、気がついた?」
グミちゃんが、ハタノの顔をのぞきこむ。
「ここは、ヤギュウの………」
記憶を、たどるハタノ。
「そうだよ」
うなずくグミちゃん。
「たしか………あっ、あれ刀のキズがない!」
周囲を見渡して、上半身を起こすハタノ。
「うん、そうだねぇ」
ニャリと、笑うグミちゃん。
「なんだ? 悪い夢でも見たのか?」
全身を、くまなくさわって確かめると、不思議な気分になるハタノ。
「なーに。ワタシがなおしてあげたの」
意味深に、右手の人差し指を回すグミちゃん。
「なおした? わからぬが、礼を言う」
全く理解が追い付かないが、一応礼を言う。
「あぁ、イイのイイの」
両手を、振るグミちゃん。
「ところで、ヤギュウ氏はどこに?」
ハタノが、そう聞きながら立ち上がる。
「今は、この屋敷にいないよ」
足を組むグミちゃん。
「左様でございますか。したらば、ごめん」
尺八と、頭にかぶる篭を手に、部屋を出ようとするハタノ。
「もう、出て行っちゃうの」
ちょっと、ゆっくりして行くようにグミちゃんは言うが、
「はい。すっかり良くなりましたゆえ」
一礼して、わらじを履くハタノ。
「あっ、そう。気をつけてね」
手を振るグミちゃん。
「ありがとうござります。では」
門を出て、足早に去る。
「なんだおめぇ………」
裏路地を歩いていると、男と女性がもめている。
「いただきます」
女の方の頭部が変形するのを見たハタノ。
「うわぁぁぁ」
女性の口の中に、男が飲み込まれていく。
「ふぅ。喰った喰った」
養老怪姫が、人間の顔になったところで、
「見つけたぞ、養老怪姫!」
ハタノは、やっと宿敵を見つけた。
「おや、いつぞやの」
かすかに、覚えている養老怪姫。
「仲間の仇。きっちり取らせてもらうぞ」
尺八を捻ると、中から長い針のような剣が出る。
「おや。そんなものを振り回して、わたくしに勝てるとでも?」
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