第44話 隠し事
「え? お腹が減ってるって?」
クニヤスが、反応する。
『う………』
ビクッと、体を動かす武者フウウ。
「今まで、そんなこと言ってたっけ?」
あたっちも、疑問だよ。
『減ってないです!』
強く、否定する武者フウウ。
「ウソは、よくないニャ」
じろっと、武者フウウを見るネコ。
『クッ………』
拳を、握る武者フウウ。
「お供え用に買って来た、お饅頭があるけど食べる?」
饅頭が、古くなっていたので、新しく買って来たのよ。
『ゥゥウ』
食べたいと、言いたいのを我慢する武者フウウ。
「いらないの?」
目の前?を、チラチラと動かされると、
『欲しいです………』
か細い声を出す武者フウウ。
「あっそ。勝手に開けて食べてね。お茶沸かすから」
そう言って、ちゃぶ台の上に菓子箱を置いて、土間に行くあたっち。
『はい』
菓子箱を開ける武者フウウ。
「でもよう。オイラ、アイツが食べてるところを見てないぜ。リリはあるか?」
お湯が沸くのを待っているクニヤスが、聞いてくる。
「あたっちもないわよ」
食事の時に、一緒に座っているけど、お箸で食べ物を持ち上げているのに、口に入れているところは見ていない。
「ちょっと、見てみるか」
クニヤスと二人で、横向きに顔の半分まで部屋に入れてのぞく。
ジーーー
『いただきま………えっ』
手を合わせて、饅頭をひとつ手に取って口に運ぶ武者フウウが、視線を感じてパッと横を見る。
「どうぞどうぞ、遠慮なく」
クニヤスが、そう言うけど、
『食べにくいです』
手を止めて、箱に饅頭を戻す武者フウウ。
「おい、そっちから食べるとは器用ニ───」
つっこみを入れるネコに、
『ちょっと!』
覆いかかる武者フウウ。
「なになに? 気になるんだけど」
もう少しで、食べるところが見れたのに。
『イヤ~、なんでもございませんわ。うふふふふ………』
ネコを、揉みしだく武者フウウ。
「そう? それならイイけど」
よっぽど、恥ずかしいのね。
クニヤスが、お湯が沸いたか見に行ったので、あたっちも行く。
『ちょっと! なんで隠してるのに言うのさ!』
小声で、怒る武者フウウ。
「なんで、隠してるのニャ?」
小声で聞くネコ。
『言えない。今は』
深刻な顔色?を見せる武者フウウ。
「言った方が、楽になれるニャ」
すり寄るネコ。
『うるさい。言えないんだ』
頭部を、左右に振る武者フウウ。
「ニャ」
意味深に笑うネコ。
「なにを話してるの?」
お茶を持って、部屋に入るあたっち。
『なんでもないです!』
ネコを、ホィッと投げる武者フウウ。
「うん。でも、まだ饅頭が減ってないわよ?」
ちゃぶ台の上にある饅頭は、そのままになっている。
『あっ、はい。今食べます』
サッと、饅頭を取る武者フウウ。
「そんなに、あわてなくても。ノドに詰まっちゃうわ」
急須から、湯飲みにお茶を注ぐ。
『アーン。イテッ!!』
フウウが口に入れた饅頭が、スッと吸い込まれて、中から声がする。
「詰まっちゃった? 大丈夫?」
なんだか、あせらせちゃったかしら。
「詰まったりしないニャ」
ネコが、つっこむ。
『もう!』
ネコを見る武者フウウ。
「早くお茶を」
あたっちが、湯飲みを武者フウウの口へと持っていって、
ザパァ
流しこむ。
『アチチチ!!』
その頃
「なぁ、ヤギュウさん。ここは?」
ヤギュウ屋敷の奥。
やたらと薄暗く、長く続く廊下。
ヤギュウの後ろを、グミちゃんが歩く。
「シッ、黙ってついてまいれ」
真剣な顔をするヤギュウ。
「はーい」
両手を、頭の後ろに組んで歩くグミちゃん。
「入っても、よろしいでしょうか?」
廊下の突き当たりの部屋の前で、片ヒザをついて、中にいる人物に言うヤギュウ。
「入って」
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