超能力者、誰笑う

アリサ眠

第1話 本性

錝一そういち、人はいつ本性を露にすると思うか?」


彼は椅子に深く腰をかけながら、こちらを見ずに外の景色の方を向いて話しかける。


「理性を失ったときだと思います」


彼は髭を整えながら


「そうだろうか?理性を失えば、それは本性ではなく人間を辞めたことになると、私は考えている。」


彼は続けてこう言う。


「私なりの答えは欲望のせい、いやおかげで理性が境界線で保たれ、何かを手に入れようとするとき、であると思うんだ」

「何故今それを?」

「お前もこれから...色々な人々と関わることになるだろう。だから忠告をな」


彼はこちらを向きながら歩み寄り、そして耳元に告げる。













天気は快晴。外は桜が舞い散り、川の流れは穏やかであり、平穏とはこのことであると言える日に俺は荷物をまとめていた。


「旦那様からです」


使用人である彼女は俺に一枚の紙を渡してきた。俺に必要はない、紙だ。


一応念の為に目を通すが予想通りだった。要約するとこうだ。


「奴らを見つけ次第、電話をしろ。そしてお前がこの家の出身であること、奴らを探していること、最後に決してバレるな、奴らと同じく




父上の思惑は分かっている。

この家を、会社を守るには俺以外の超能力者が邪魔だ。そいつらを消すのか、はたまたその家を貶めるのかは知らない。


他の財閥もここと同じく、非人道的なやり方で超能力者を生み出しているのは間違いなかった。そしてそいつらがここの席、頂点を奪いに来ようとするのは分かりきっている。


もしかすると父上はアレを使うのかもな。超能力を消すアレを。



荷物をまとめ終えると早速バス停に向かう。


バス停には何人か同じような年頃がおり、互いをチラチラ見合っている。


今から向かう場所は「白嶺学園しろみねがくえん」。そこは孤島になっており、学園島と言ってもいい。


周囲は学生しかいない。それにもかかわらず遊園地や水族館、オフィス街などがある。


学生は学業に励みつつ、自分達が違うお金を稼がなければならない。仕送りなどを当てにすることは禁止である。


そこでは色々な稼ぎ方がある。バイトのように飲食店などで同じ学生相手に働くか、また自分達でビジネスを始めたり、物作りをしたりなど。

そこには何でもあると言ってもいい。まるでこの国の縮図、良いとこ取りみたいな場所だ。


だがそんな夢の学園生活だけじゃない。ここは唯一の7年制であり、高校と大学を合わせたようなもの。そんな場所に表は優秀な学生なのに裏では学園島で犯罪を犯し、生計を立てるものもいる。


クラブもあれば銀行もある。なんでもできる。学び方も自由で大学のように単位制であり、夜中にも授業がある。これらがあるからこそ自由に稼げるのかもしれない。



そんなことを考えていると窓の外から小さく目的地が見えてきていた。






入学式にて。


かなりの学生がいることが伺える。その全員がこの島で一人暮らしをするのだから、かなり多くの学生マンションがあるのだろう。そして一人や二人ではないだろうな。超能力者も。



俺は人通り説明を受け、渡された資料と携帯を手に自分のマンションへ向かっていた。


携帯にある独自のマップで探すと海岸沿いにあるようだった。


もう既にグループが出来始めているのか、一緒にマンションへ向かう者たちがいる。同じ中学校出身ぽいな。


道中、コンビニなどを発見しつつ歩いていくとマップ上にサービスエリアがあったりなどここがかなり大きい島だと理解する。


端から端まで、開発された場所から自然豊かな場所まで全てが自由に移動できる。驚いたことに車やバイクが売っていたりする。また免許センターなどもある。7年制だからだろうか。


目的地に着くと目の前には海が広がっており、景観が良さそうだ。そしてそれを踏まえた上でなのか、周囲はタワマン群になっていた。


「ちぇ、俺2階だわ」

「まじ?俺15階ww」

「はぁ?ずるすぎるだろ、俺毎日住むわ」


エントラスからこのような声が聞こえてきた。30階建てのマンションであり、一年生だけのマンションと書いている。


21階と書かれた鍵を持ちながらエレベーターを待つ。しばらくするとやってきた。俺はそれに乗り、21階を押して待っていると15階で止まった。


フードを深く被った人物が乗ってきた。上しか行かないから降りるだろうと思ったが降りない。

そしてその人物は29階を押す。


(友達の部屋にでも行くのか?)


21階に着き、2108と書かれた部屋まで歩く。廊下は静かでチェリーのような甘い果物の匂いが充満していた。


部屋に着くと学生にも関わらず中々の高待遇が迎えていた。


部屋の大きさは2LDKであり、ベランダも広い。汚れた跡も無ければ必要最低限な物は揃っている。ただ家具などは自分達で稼がないといけなさそうだ。


俺は携帯から銀行アプリを開く。そこには10万の文字。入学祝いとして一律10万が全員に与えられていた。


授業開始日までに金を稼ぐ方法を見つけなければ行け無さそうだ。


とりあえず少し眠ろう。朝早かったせいか疲れと眠気が襲ってきていた。


俺は18時にアラームをセットし、制服のまま眠りにつく。




起きると時刻は既に20時になっていた。そして次に空腹が襲ってくる。


俺は近くのコンビニを目指し、下へ降りることにした。


エントランスからは浜辺で花火をやっている人達がいたり、焚き火をしたりしている。既にもうこの生活に慣れていそうだった。人間は慣れる生き物と言ったが早いな。


コンビニでカップラーメンと水を買い、まだ比較的明かりが着いている公園の方から帰ることにした。


俺は公園の、それも人気が少ないベンチの前で後ろを振り向き告げる。


「お前は誰だ?」

 

そこに立っていたのは金髪で眼帯をした女だった。


「人に名前を聞くときは自分から名乗ったらどうだ?一年だからか?それとも」



彼女は不気味に笑う。











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