最強魔法は合言葉で

アリサ眠

第1話 

この試合で私の運命が決まる


必ず掴み取るんだ


絶対にこのチャンスを捨ててはならない


心臓がうるさい


観客は興奮している


私は笑っている


そして奥にはあの"血濡れた悪魔"を率いる魔法チームのスカウトが見ている


私は...それに見せつけるんだ


できるってことを


やれるってことを


私が誰よりも悪魔だってことを


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「彼らの勢いは止まりません---/次々と倒していきます---/最後に笑うのは悪魔達だった---/」


オンボロのテレビは私の前で興奮気味に伝えてきて、私も同様にワクワクさせられていた。


あの"血濡れた悪魔"と呼ばれているチームは世界魔法大会で優勝してしまった。それも何度も。


「こら。いつまでテレビを見ているの」


母親がくたびれた様子を見せながら玄関越しに伝えてくる。


「何か手伝おうか?」

「良いのよ。あ、良ければテーブルを拭いておいて」

「はーい」


母は女手一つで私を育ててくれている。生まれた時から父親を知らない。だから恵まれた環境とは言えないけれども私は満足していた。


「明日は試合でしょ?大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。私なら勝てるから」


明日は魔法試合がある。私が所属しているチームには同じように貧しい子供達だけれども魔法の扱いが上手い子達が多かった。


「明日も勝ちそうね」

「もちろん!私は魔法使いになるから」


私は母の手料理を食べて、満足そうに薄いベットに入り、母の何かを切る音を頼りに眠りにつくのだった。



「起きなさい。もう朝よ」

「ほんと?!急いで支度しないと」


時間はまだ大丈夫そうだ。

私は急いで身支度をし、玄関にて

「行ってきまーす」と伝える。


バスには乗らず、少し早歩きで会場に向かう。

もしかしたら今日の試合にはプロチームのスカウトがいるのかもしれない---そうな幻想に浸かりながら会場へ足を踏み込む。


地区大会にしては結構な人数がいた。

準決勝だからというのもあるだろうが、それでも応援の声量が今までと違う。


プレッシャーが重くのしかかる。


「待ってたぞ。ヒーロー」


監督が遅れ気味な私を茶化しながら手招きをしている。


「遅れてすいません」

「大丈夫だ。2、3分くらい。今日の相手は分かっているな?守りを中心に遠距離魔法を使うやつが身を出したら反撃だ。」

「わかりました。」


渡されたユニホームを来て、杖を持ち、顔を叩き、深呼吸をする。


今日も勝つんだ。勝つんだ。



試合は有利に進んだ。下馬評通りに私達が押していたところで休憩タイムに入る。


そこで思いがけないことを伝えられる。


「母が倒れた---」


監督が伝えた言葉は私にとって集中力を無くし、魔法を封じるものだった。


集中できなかった私はチームの足を引っ張り、逆転負けしてしまう。


私はチームを捨てて急いで病院に向かうと、母は笑いながらも申し訳ない顔をしている。


「大丈夫なの?!」

「大丈夫よ。ただの動きすぎみたい」


「無理しないでよ。」


そう言いたかったが母は私のために働いてくれている。そんな言葉を私が使えるわけがなかった。


私は母の腕の中でただ泣き続けた。



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