ジャンプ

yakuzin.

道のり

女の子が生きていました。

女の子は確かにそこで、人間として息を吸って吐いて、存在証明を陰ながらも、それ

でいて当然のように繰り返していました。


毎日は、喜怒哀楽を顔に出すだけで過ぎていきました。

何も考えていない事にさえも、何も思いませんでした。

それでも女の子は、幸せでした。


女の子は成長しました。

彼女の住む地域は周りの人から「へんなばしょ」と言われていました。

よく分からなかったけれど、みんなが「へんなばしょ」と言うので、女の子は自分が

「へんなばしょ」に住んでいるんだと知りました。

女の子はよくお腹が空きました。

きっとお勉強を頑張っているからなんだと、お母さんに褒めてもらいました。

女の子は、自分が考えていることが分かるようになりました。

お母さんは、時々悲しそうで、苦しそうな顔をしました。


女の子は、もっと大きくなりました。

みんなに訳もわからず合わせていたら、いつのまにか独りぼっちでした。

やっとみんなが近づいてきてくれたと思ったら、色々と痛い事をされました。

女の子はもう、自分が考えている事を知りたくはありませんでした。


女の子は自分で責任を負わないといけなくなりました。

お母さんが、女の子の分を手放したのです。

きっと、もう成長した女の子なら一人で生きていけると信じたのでしょう。

残酷でしたが、それは愛情でもありました。

お母さんは、女の子以外の全てを背負っていったのです。

その後ろ姿を涙越しに霞んで見たその日から、お母さんが戻ってくる事は一度もありませんでした。

どんな困難があろうとも、やっぱり、女の子は母親と一緒に暮らすことだけで幸せだ

ったのでした。


女の子は、進んでいた道を立ち止まりました。

何度も何度も振り返って、もう進みたく無いと思いました。

最初はスキップした道でした。


今はもう、後退りしたくなりました。

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