第10話 2つの再会

真夜中、鈴虫が鳴り響く中私は山の中に入る。

それは私と別行動した衣笠家と合流する為である。その山の中こそ合流ポイントだから。

先に出たであろう衣笠家のアルファードが駐車してあるのを確認した

私が高校へ通えるよう手引きしてくれた恩人の家。

まぁそれも今となってはオジャンにしたけれど…

情報が正しければ今も生きてる

山奥にある小さなコテージ。

ぱっと見はキャンプか民泊で使うような風貌の家だが、小国1個分の武器の数だけでなく金もある。

このような形で私は再会したくなかったが手段を選んでいられる余裕はなかった。

意を決してノックをした。


「状況は察してる。入れバカ者」


ドアを開けたら身長は男性並みに高くワインのように赤い長髪でそれは凛々しくツリ目の女性が私の前にいた。安斎心那あんざいここな28歳

この人が私の人生を変えてくれた恩人だ。親しい間の人はココナッツと呼ばれている。私は恐れ多くて呼べない


「言いたいこと分かるよな?」

「はい」

「よしっ」


掌で私をバチーンと叩き部屋中にそれは響き私の頬は赤く腫れた。そして私を抱きしめ更に説教を重ねた


「一般人を巻き込みやがってこのバカ。どういうことかわかるよな」

「はい。申し訳…ないです」

「おまけに街中でドンパチ繰り広げてここは戦地じゃないんだ。顔を他の奴らに見られたらどうする気だったその使えない左足で」

「何も考えてなかったです。ただ衣笠家の方が逃げるの時間を稼ごうとしてました」

「お前はやってることは不器用だ。誇らしいことだがな」

「褒められた人間ではありません」

「あの頃に比べればましさ。お前に会いたがってた人間がいるからあってやんな」


2階に上がり食卓には沢山の料理が並べられていた。衣笠家の皆は夕食の準備をしていた。

私の方には目もくれず取り皿を分けながら千理は言う


「あんざいさん。どなたか御客人だっ…た」


私の方を向き、目を大きく開き幽霊を見たかのような顔だった


「葵…ちゃん?」

「うん…お久しぶり」

「葵ぢゃ゛ん゛!」

「うん。そう」

「生きててよかった」


千理は私に抱きついてきたので抱きつき返した


「殺さないで」

「ごめ゛ん゛!ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛」

「どうして謝るの。むしろ謝るのは私。1人でよく戦ったねご両親を守りながらよくやったよ千理。」

「あ゛り゛か゛と゛う゛でも葵ちゃんも二度と自分を犠牲にしないで」

「約束できない」

「約束して」

「善所はする」


ご両親は近寄り握手を求める手を出した


「ありがとうございます。このお礼はなんでもいたします。娘共々ほんとにありがとうございました。」

「だったら、生きて家族仲良くしな。それでチャラ」


私は握手に応じた。私にとって2つの再会を果たし安堵した。

電子タバコをつけようとしたが反応せず電池切れのサインが点灯した。

師匠も2階に上がりボヤいた


「葵も臭うからとっととお風呂入りな」

「はい…」


私は脱衣所で服を脱ぎ、お風呂に入った

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