第7話 家族は金で買えない

「起きて。朝だよ」


朝日に照らされて起きる


「よく眠れた?」

「とっても」

「寝癖酷いから治してきなよ」


千理に促され脱衣所に行こうとした。

リビングにいる千理の両親に声をかけられた


「待って下さい」

「何でしょう」

「娘にあんな事させて申し訳ない」


頭を下げるだけでなく、日本で深い謝罪を意味する土下座を私にしてきた。私は千理の為

壊れた家族が少しでも形が戻れるなら鬼にでもなろう。お金では家族は買えない。今ある家族は大事にする事を私なりに衣笠家に教えてあげよう


「頭をあげてください」

「え」

「まず、娘さんのした事は褒められた事でも頭を下げることではありません。復讐なんてしない方がましてや自分の手を血で染める行為なんてしないに限るんです。」

「それはそうだと思いますが、娘にあんな事をさせた私達も責任があります。親がしなくてはいけない事を10代半ばの子供にさせるなんて」

「えぇ。10代半ばのこれからを生きる子供にさせる事じゃないのはおっしゃる通りです。あなた達親は腑抜けになる暇なんてないんです。しかし復讐は駄目です。殺してしまえば同じクズのレベルまで下がってしまいます。貴方達家族は程度の低いクズとは違います。千理さんを見れば教育レベル、愛情をたくさん注いだのが分かりますよ。見ず知らずの私を招き面倒まで見るのは親を見て育ち、千理さんなりの形で同じ事をしてると思いますから。

まず、衣笠さんたちがすることは私に対する謝罪ではない!千理さんと塞がった穴、空白の時間を埋めることだと思います。」

「…は…はい。」

「私はもう家族呼べるものはいません。家族がまだいるのなら後悔ないように過ごして下さい」


千理の両親は千理のいる部屋に行きみんなの泣く声が飛び交った。


「身支度すまさないとな。」


脱衣所で服を脱ぎ浴室に入る。

給湯器はすでにお風呂が湧いてる状態になっており歓迎の準備をしていた

再びシャワーを浴びて寝癖を整えた

脱衣所から声をかけられた


「葵ちゃん。入っていい?」

「いいよ。」


千理の目は腫れており泣いた後なのが伝わる


「葵ちゃん。ありがと」


抱きしめられた。人懐っこさがこの娘からよく伝わる。


「別に…余計なお世話だった?」

「そんな事ない!!パパとママが昔のような形に少しでも戻れて私嬉しいから」

「そっか…」

「ほんと葵ちゃんは私にとって神様がくれた天使だよ。どうしてお金を払ってないのにここまでするの?」

「家族はお金じゃないよ」

「だけど葵ちゃんお金大好きじゃん」

「天使じゃない事も前に説明しただろ?

確かにそれは否定する材料はないけれどこれも感謝と恩返し…じゃない?」


明確に答えるのは恥ずかしくなりはぐらかした


「えぇー?私何もしてないのに?」

「何かしてるよ…」

「分からないー!教えてよ」

「秘密。湯あたりする前に出よ?」

「ぶぅー」


私服を借り髪を乾かした

これからの事を千里に告げる為

私は千理と一緒に借りた部屋に行く


「長居する訳にも千理達に迷惑をかけるわけには行かないしこの家を出るよ。ありがとう」

「いや。」

「イヤとか駄目とかじゃない。一般人ができる事はここまで。」

「一緒に行く」

「死ぬよ?」

「それでも行く。」

「なんで?」

「何も貴方に返せてない」

「対価としてお金はもらった。契約は既に終えている…なら何も返せてないことはない」


話合いにより引き戸が開き千理の両親が私たちのとこに駆け寄ってきた。


「一ノ瀬さん少しよろしいでしょうか」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る