濃い出会いは恋で愛

巳柳 衣月

夜中の中道

第1話 夜中見た



ゆっくりと確実に這ってゆく指に甘い吐息が漏れる。

それは確実に熱を帯び限界に近づき至福の時を巡り理性と衝動がせめぎ合う。

増してゆく衝動は極限を脱しようと……。

「リリリリリィリリリリリィ」

「ンライ」

「ンライ」

「ンラララライ」

最高のタイミングを逃した朔は、しばらくそのままに放心していた。

「んだよぉ」と怒りより悲しみが濃い声色でスマホを手に取る。


”朔!元気ね?もう9月も過ぎて連休前です帰省しておいでよ!!”のメッセージに

既読をつけなかったので電話とスタレンが来ていた。母からである。

「くぅぅ」と溜め息混じりの声を漏らしタイミングの悪さを噛み締めながら母に折り返し電話をかける。



プー…ッもしもし??朔?なんしよん?読んだね?んで帰省すっとね?」

「おふッ」

「ききよーとね?どげすっと?」母が怪訝そうに質問を被せる。

「帰ろうち思っとるちゃ」思わず方言になり吹き出してしまう。お互いの近況報告をし電話を切った。

さっきの場面で止まっているTVを消して買い物へ行くことにした。

未消化だが気分は賢者なのだ。

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