作戦

「犯人の行きそうなところが大体予測ついたことだし、ちょっとかなって」

 魚沼は言った。

おびせる?どうやって?」

「黄色いものをあえて店頭に出してみて、それを盗むかどうか見張るの」

「で、犯人らしき人物が来たら確保する、と」

「そういうこと」

「上手くいくかなぁ……」

 不安そうに水越は言った。


「よし、さっそく黄色いものを何にするか決めましょ!」

 ささやか通りで、盗まれていないところ、かつ盗みやすいものを挙げて言った。

 アーケードの奥の方には雑貨屋、衣料品の他に、書店、洋菓子屋、靴屋、眼鏡屋などがある。

「洋菓子は店頭に出して売ってるところってあまりないですよね……」

「黄色い本ってのも、探して集めないとないですね」

「黄色い靴は目立つけど、かえってあまりないんだよね」

 作戦は難航する。

「お、いい考えが降ってきました」

 虎松が声を上げた。

「何?」「何ですか?」

 魚沼と水越が同時に聞いた。

「服です。Tシャツなんかどうですか?」

「服は確かにまだ盗まれていないけど……」

「黄色の商品が少ないからですよ、きっと。靴もそうだけど、ファッションで黄色って合わせるの難しいじゃないですか」

「虎松さんの作戦は、店内にある黄色のTシャツを集めて店頭に並ばせることですか?」

 すかさず水越が言う。

「ううーん、いいセンしてるけど、僕が思いついたのはちょっと違うんだよなぁ〜」

「何、焦らしてるの。早く言いなさいよ」

 若干イラつきながら魚沼が言った。

「Tシャツは我々で用意します」

「え、それって買うってこと?」

 水越も驚いている。

「ネットで大量に買います。無地のをね」

「……お金は虎次郎がちゃんと払ってよね」

「僕の名前は三郎ですよ。ちゃんと覚えてくださいね?……で、大量に買ったら、衣料品店にお願いするんです」

「うん……?」

 水越は納得がいかない顔をした。

 虎松の作戦では、黄色のTシャツを大量に買ったのち、衣料品店に行って、売ってくれないかと交渉するのだそう。そして、店側からの許可が得られれば、店頭のワゴンに置かせてもらうという流れだった。

「大量に購入したや理由を聞かれたら、別の色を買うはずだったけど、うっかり黄色を選んでしまったとか、オリジナルTシャツを作りたくてたくさん買ったって言えばいいと思って」

「まぁ、誤って買ってしまったっていう理由は納得してくれるかもしれないけれど、あとはそれを店頭に置くことを引き受けてくれるかってところよね」

「そこなんですよね〜。そこをなんとかできれば……」


 頭を抱える2人を見て、水越が言った。

「あの!ちょっと私に任せてくれませんか……?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る