あさがお
@nikoranpo
播種
もう、忘れることはないだろう。
なぜ君は…。
蝉の声が静かに響き渡るような夏のはじめ。
もうこの世界から消えてしまいたい。そんなことを考えながら一人、丘から街を眺めていた。
「ここから落ちればこんな退屈から抜け出せるだろうか。私はどこまで落ちていけるだろう」
そんな私の言葉を聞いていたかのようなタイミングで、天まで響くような、いつ消えてもおかしくないような儚い声の歌が聞こえてきた。声の主を見て私は初めて人を美しいと思った。
私が見惚れていると君は恥ずかしそうに、或いは不思議そうに私を見つめていた。
君はどこまでも続く春の青い空のように明るく、見ているだけで勇気をもらえ、背中を押されるような素敵でそんな笑顔をしている。
君は私に声をかけてきた。
救いの手を差し伸べるようなやさしい声で、私を包んでくれた。
名前は「笑歌」(エミカ)と言った。
私は何があってもこの手を離してはいけない、絶対離さないと誓った。
エミカは引っ越してきたばかりで街のことを全然知らなかった。だから早く慣れるように自分のお気に入りの場所を探していたところだった。
そんな中見つけたあなたはとても弱々しく見えた。でもそんな君は、ダイヤモンドの原石のようだ。私にとってあなたはとても魅力的だった。そんな彼女の名前は「愛儚」(アイム)
この手を離したらきっと君の命の火が消えてしまう。そう思った。
二人はお互いに手を取り握手を交わした。
I hope that you’re happy with me in your life
I hope that you won’t slip away in the night
アイムはエミカに助けられた。そのお礼も込めて普段は行かないような花見に行ったり、お祭りに出かけたり、やったことのないクリスマスパーティーをしたりした。アイムの初めてに沢山触れて、エミカたちの距離はどんどん縮まり二人でシェアハウスをするほどになった。
自殺願望の強かったアイムは少しずつ生きる楽しみを見つけ、エミカの優しさに触れながら暖かい暮らしを送っていた。二人は、これ以上ないほどに大切な親友で相手のことが大好きになっていった。
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