夏休み祖父母の田舎へ行ったら従姉妹のお姉さんが恋人のように絡んできて・・・

最時

第1話 夏休みお祭

 いきなり抱かれる


 夏休み。

 長野の田舎の祖父母に家に来た。

 親に連れられてコロナ前は毎年来ていたのだが今年は数年ぶりに来た。

 縁側に座って庭を眺める。

 昼過ぎ。

 自宅なら猛暑でエアコンの効いた家から一歩も出たくないがここは外でも暑くない。

 風や空気が気持ちいい。

 空気がこんなに気持ちいいなんて初めて思った。

 空気が美味しいってこういうことなんだろうなと。


 しばらくすると車が入って来た。

 伯父さんの車だな。


「ツバサ君」


 車から降りてきて俺の名を呼んだのは従姉妹のヒカルさん。

 兄妹のいない俺にとっては本当の姉のように慕っていた。

 久々に会ったヒカルさんはとても綺麗で目が離せなかった。

 言葉が出ない。

 ヒカルさんは俺のところまで歩み寄ってきてハグ。

 俺は固まった。

 そしてそのまま俺の顔を見上げてくる。


「久しぶりだね。

 元気だった?

 大きくなったね。

 かっこよくなった。

 お姉ちゃんびっくりしちゃった」


 俺は何も言えない。

 心臓がドキドキして、なんとも言えない不安感。

 顔が近いけど、もっと近くにいたい。

 キスを意識した。

 その時ヒカルさんを呼ぶ声が。


「はーい。

 それじゃあ、またね」


 ヒカルさんは行ってしまった。

 はあ。

 カワイイ。

 俺のこと好きなのか。

 しばらくふわふわしていた。



 後ろから抱かれる


 縁側でスマホeスポーツの練習対戦をしていると


「エイッ」


 うなじに冷たいものが、俺は危うくスマホを投げそうになった。


「ふふっ。

 ゴメンネ。

 そんなに驚くなんて思って無くて」


 ヒカルさんのいたずらだった。


「かき氷持ってきたよ」


 俺は手で合図して再びスマホに向かうが今更だった。

 ヒカルさんに練習対戦のことを話すと。


「ゴメンね。

 遊んでいるだけだと思って」


 後ろからヒカルさんが抱きついてきた。

 そして耳元で


「本当にごめんね。

 前の時もずっとスマホゲームしていて、なかなか私の相手してくれないから今回もかなって。

 あの頃と違って今は選手なんだね。

 かっこよくなったね。

 身体も大きくなって、前は守ってあげなきゃって思ったけど、今は頼りになりそうな感じ」


 そう言うとヒカルさんの腕は強くなって背中に胸や首に熱を感じる。


「だけど今だけちょっと甘やかしてもいいかな。

 あーん」


 そう言うとヒカルさんは二人羽織のように俺の口にかき氷を運んだ。


「おいしい?

 良かった。

 この氷おばあちゃんが氷屋さんから買ってきた氷なんだよ。

 私も食べよ。

 うん、おいしい。

 はい、あーん」


 そう言ってヒカルさんは俺と自分と交互にかき氷を口に運ぶ。


「なんか、身体は暑いけど口だけ冷えちゃったな」


 首に柔らかいものを感じた。


「今日、神社でお祭りやっているんだって、後で行こう」


 そう言うとヒカルさんは行ってしまった。

 なんだか寂しいような切ないような。



 密着着付け


 夕方、浴衣に着替えてお祭りへ行くことに。


 浴衣か・・・

 面倒だなと思いながら着替えると以外に涼しくて悪くないかなと、動きにくいけど。

 玄関へ向かうと


「ツバサ君。

 浴衣に合っているよ。

 私も久しぶりに着てみたんだけどどうかな」


 もちろん似合っている。


「ありがとう。

 あっ、ツバサ君、帯もう少し綺麗に結んだ方が良いよ。

 結び直すね」


 ヒカルさんは後ろの結びをほどいて結び直すのかと思ったら帯を完全にとってしまった。

 はだける浴衣を慌ててを押さえた。

 ヒカルさんは前に来て、衿を整えて、そして帯を回す。

 ヒカルさんの髪の匂い、そして胸が当たる。

 ヒカルさんは手際よく俺の帯を結ぶ。

 ずっとこの時が続かないかなと思った。

 立ち上がったヒカルさんは俺の肩に手を置いて


「一段といい男になったよ」


 そのまま抱きしめたくなった。


「じゃあ、行こうか」


 ちょっと不満そうにうなずいた。


「どうしたの?」


 抱きしめて良いですかとは聞けない。


「もう」


 ヒカルさんはそう言うと優しくハグをしてくれた。


「言いたい事があるななら言わないとダメだよ。

 お姉ちゃんはツバサ君に何でもしてあげるから」


 俺は恥ずかしそうにうなずいた。


「よしよし、じゃあ行こうか」


 ヒカルさんは俺の頭を撫でて手を引いて玄関へ向かう。

 ヒカルさんに撫でてもらって、手をつないで、この歳になってこんなことがこんなに嬉しいなんて、もう・・・



 腕を組んで神社へ


 夕方。

 田んぼの広がる田舎道を歩いて神社へ向かう。

 下駄の音。

 虫や蛙の声。

 田舎も良いな。

 そしてヒカルさんの匂いがして腕を絡ましてきた。


「のどかね。

 田舎って良いな。

 ずっとここに居れたら良いのに。

 ツバサ君とずっと」


 ヒカルさんの腕が強くなった。


「ダメかな」


 ヒカルさんの目が潤んで見えた。


「ごめんね」


 そう言って歩き出すヒカルさんを俺は抱きしめた。


「ありがとう」


 ヒカルさんも腕をまわしてきた。


「なんだかお祭りどうでも良くなってきちゃったな」


 僕も同じ気持ちだった。


「うーん。

 でもここまできたんだし、せっかくだから」


 ヒカルさんの差し出した手を握って神社へ向かう。



 射的で指を絡ませる


 神社に着いた。

 祭りに来るのは久しぶりだ。

 普段なら薄暗くなった神社は少し不気味さを感じるものだが、明るくてたくさんの人がおり、小さい子の声もする。

 あまり賑やかなのは好きではないけどこれは悪い感じがしない。

 小さい子を見ていると懐かしさも感じる。


「何する?」


 ヒカルさんが腕に絡みついて、いたずらっぽく聞いてきた。

 嬉しいのだが知り合いに見られたらとキョロキョロしてしまう。


「ふふっ。

 そんなに恥ずかしがらなくても。

 金魚は持ち帰らないといけないし、とりあえずあれやろう」


 指された先は射的だった。


「ツバサ君、得意じゃない」


 やったことないのだが、軽いものならともかくそれなりのものは当たってもとにかく倒れないイメージしかない。

 無難に簡単に落とせそうなお菓子を狙う。

 普通に買った方が安いと思うのだがそういうものだろ。

 狙っているヒカルさんを見ると、目を疑って固まった。

 大きく身を乗り出して巨大な箱を狙っている。

 

「えいっ」


 パンッ


 予想通り箱は少しも動いていない。


「ダメかあ」


 それはそうだろう。

 100発当てても無理だと思う。

 箱はテーマパークへの旅行券だった。


「はあ、ツバサ君と行けたら良いのになと思ったんだけど」


 残念そうなヒカルさんだけどなんだかかわいらしく思えた。

 俺のとったお菓子をあげると


「ありがとう。

 いつか一緒に行こうね」


 差し出された小指に絡ませた。



 金魚すくいで見せつける


 そして金魚すくいに来た。

 並んで金魚を狙う。

 三匹でポイは破れてしまった。

 ヒカルさんは四匹目すくえるのかなと思ったけど失敗。


「あー、破れちゃった。

 三匹。

 ツバサ君と一緒」


 嬉しいような恥ずかしいような。

 それにしてもヒカルさんテンション高いな。


「楽しいね。

 小さい頃を思い出すなあ。

 毎年ツバサ君とお祭り行くの楽しみにしていたんだから。

 ツバサ君が中学生になって一緒に行ってくれなくなって、コロナもあってずっと寂しかった」


 うつむくヒカルさんを撫でて手を握った。


「ありがとう。

 私、本当に嬉しいんだから」


 ツバサさんが抱きついてきた。

 金魚すくいのおじさんがにやけていいるのが見えたが気にせず腕を回した。

 もうヒカルさんから離れられない。



 屋台でキス


「林檎アメ買ってくる」


 ヒカルさんは林檎アメが好きだ。

 いつも林檎アメを買っていたけど、俺は正直そんなに良いものかなと思ってしまう。


「ツバサ君林檎アメはいらないんだよね。

 こんなに美味しいのに」


 苦笑いしていると


「あとで林檎アメのおいしさを教えてあげるから」


 ヒカルさんが急に耳元でささやいてきてドキドキした。


 明るく賑やかな屋台から離れて、建物の裏手の石段に腰を掛けてヒカルさんは林檎アメ、俺はたこ焼きを食べる。

 ヒカルさんはおれにぴったりくっついて座る。

 飴をなめているヒカルさんもかわいらしい。


「やっぱりお祭りは林檎アメだなあ。

 たこ焼きも美味しそうだね。

 私にも一つちょうだい」


 口を開けて待つヒカルさんにたこ焼きを入れる。


「おいしい。

 ありがとう。

 はい、林檎アメ」


 いわゆる間接キスを意識してドキドキした。

 俺がなめる様子を見ている。


「美味しいでしょ」


 するとヒカルさんの顔が近づいて、俺が持つりんごアメををなめてそのまま俺の唇にきた。


「美味しいでしょ。

 私も良かった?」


 俺はうなずいた。

 そしてお互いに手を回して、深くキスをした。



 帰り道求め合う


 なんだか夢のような時間だったなとふわふわしながら家へ向かう。


「あっ、蛍いるよ」


 あぜ道で小さな光が見えた。


「綺麗だね」


 ヒカルさんと指を絡ませて、そしてあぜに座る。


「向こう見て、たくさんいるよ」


 田んぼの方へ目をやると数え切れないほどの小さな灯りがみえた。


「すごい。

 きれい」


 ヒカルさんの手に力が込められて、そしてしっとりと汗を感じた。


「蛍って、求愛のために光っているんだよ。

 生き物の求愛ってだいたい男の子からだけど、蛍は女の子も光っているんだよ。

 だから、私もヒカルだけに光っていいよね」


 思わぬジョークに声を出して笑った。


「もお、ツバサ君笑いすぎ。

 私までつられちゃった。

 はあ、面白かった。

 ありがとう。

 だけど本当に思っているんだからね」


 俺はヒカルさんを撫でて、そしてキスをした。


「勇気出して良かった。

 ツバサ君、私の事なんてなんとも思ってないと思ったから」


 そんなことはない。

 俺の方こそ、ヒカルさんがそんなに俺のことを思ってくれているなんて思っていなかった。


「そうなの?

 うーん。

 ツバサ君鈍感」


 それを言うんだったらヒカルさんもだろ。


「えー

 そんなこと無いと思うけど。

 ツバサ君がわかりにくい」


 俺たちは笑った。


「ふふっ

 帰ろうか」


 家へ向かって歩き出した。



 池の思い出


 家に着いて、池に金魚を放した。

 いつもの行事だ。

 大きな池に放された金魚はいっそう小さく見える。


「小さくてちょっと心配だけど、大きな金魚何匹かいるしね」


 あれって俺たちが捕った金魚なのかな。


「そうだよ。

 おじいちゃんがそうだって言っていたよ。

 私達も成長したよね」


 ヒカルさんは腕に抱きついてきた。


「小さい頃覚えてる?

 猫とか鳥が来て金魚を狙っていて、ツバサ君ずっと池を見張っていたこと」


 そんなこともあったな。


「みんな、もう大丈夫って言っているのにぜんぜん池から離れなくて、おじいちゃんとかかし作ったの」


 ああ、懐かしい。


「おじいちゃんとツバサ君と一緒にかかし作ったのも楽しかったなあ」


 あの時は楽しいと言うより、金魚を守りたくて必死だったな。


「そうだったね。

 私のことも守ってくれるかな」


 もちろん。

 俺はうなずくとヒカルさんは抱きついてきた。


「うれしい。

 ありがとう。

 私はツバサ君がそばでいるだけで嬉しいから」


 キスをした。


 ヴゥー


 スマホにメッセージの着信が来た。

 明日のeスポーツ練習の予定だ。

 ヒカルさんが目を細めている。


「そろそろ寝ようか。

 あっ、そうだ明日の朝付き合ってくれない」


 えっ、朝って。


「5時かな」


 5時! 朝と言うより夜。


「いや、もう日は出ているから。

 じゃあ、5時半で良いよ」


 5時半に起きる・・・


「5時半に出たいんだけど、いいよ5時半にお姉ちゃんが起こしてあげるから」


 はあ・・・


「相変わらず朝弱いんだね」


 弱いというか。

 しっかり寝たいだけ。


「へえ、昔はそんなへりくつ言わないで素直だったと思うんだけどな」


 再び冷ややかなヒカルさん。

 さて、朝早いから寝ないとな。


「ふふっ。

 お休みなさい」

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