伝説のダンジョン探索者さん、金が尽きダンジョン配信をしてみたら案の定大バズりしてしまう。

第1話 そうだ、ダンジョン配信者になろう！

　今から十年前のこと。

　俺こと嵐山龍之介は世界最高難易度である渋谷ダンジョンのダンジョンボスを倒し、伝説のダンジョン探索者となった。

　目標だった渋谷ダンジョン攻略を終えた俺は同時にダンジョン探索者を引退したのだった。

　渋谷ダンジョン攻略による報酬5億で一生を生きていく。

　そう決めていたはずなのに……！！

　スマホから通帳アプリを開き、現在の所持金を見る。

　0円。

　続いて財布を見る。

　0円。

　頭を抑えた。

「あああ──ッ、金が、金がねェッ」

　酒、女、ギャンブル。

　毎日のように遊びまくっていたら、十年という期間で5億円を使い切ってしまった。

「何してんだ全くよおおお」

　ん……。

　テーブルの上に1万円札が置かれていた。

「おおお……」

　涙目になりながら俺は1万円札を手に取った。

「……よしッこの1万円札で……」

　パチンコ屋にやってきた俺は、迷わず台に座った。

　319でRush突入率が80%の継続率80%のオール1500発の台だ。

「くそ……何してんだよ、俺……」

　十年前、こんなことになるだなんて思ってもいなかった。

　テレビや雑誌の取材をすべて蹴っていたが、今思えば受けた方がよかったな、と思う。

　なんたって金が手に入るのだから。

「頼む、頼むよお、当たってくれ……」

　一人喋る俺を不審がる両隣のおじさん。

　が、しかし……15分後……。

「終わった、終わった、終わった……」

　当たるところかリーチ演出すらこなかった。

　何がおもろいんだよこれ。

　死ね死ね死ね死ね！！

　席を立ち上がると、両隣のおじさんが同時に当てた。

「やったわい」

「うひょ〜」

　俺は二人に向かって、

「うるせェ、音量一でやれ！！」

　と、どなった。

　席を外すと、すぐに一人のおじさんが座る。

　ヘソに玉が入ると、抽選が始まった。

　この演出だけ見てくか……。

　変動が始まると、すぐに信頼度90%の演出が始まった。

　は？

　マジで言ってんの？

　頼む、外れてくれ……。

　外れてくれ……。

　外れてくれ……。

「当たったわい」

　くそ、死んでくれ。

　目からは大量の涙が溢れ出した。

　俺、神様から見放されてる？

○

　家に帰ると、俺はソファに倒れ込んだ。

　え、まじでどうしよう。

　これからどうやって生きてけばいいんだ？

　グ〜、とお腹の虫がなる。

　なんて空気の読めないやつなんだ。

　クソッタレがよ。

「つっても、食べれるもんねェんだけどな」

　あ〜マジどうしよう。

　働かなきゃだよなァ。

　嫌だなあ、働きたくねェ。

　なんで伝説のダンジョン探索者がせこせこ働かなきゃならねェんだよお。

　絶対に間違ってるよな。

　うん、間違ってるな！！

　スマホでトゥーンチューブを見る。

　さてさて、推しは……。

　ここ最近、流行っているものがある。

　それは、ダンジョン探索の様子を配信するダンジョン配信、というものだ。

　ダンジョン配信の内容には様々なジャンルがある訳だが、やはり一番人気は魔物を次から次へと無双する配信動画だ。

　見ていた気持ちいい。

　スカッとするのだ。

　つっても、俺が見るのは……。

「はい、じゃあ、今日も元気にダンジョン配信をするピョン！！」

　可愛い女の子が可愛らしく配信する動画。

　彼女の名前はうさピョン。

　名前の通りうさぎのようなコスプレをしてダンジョン配信をする配信者である。

"うさピョン、こんにちは～！😊☀️ちょうど3時のおやつタイムだけど、うさピョンも何か食べた？🍰🐰✨5月の午後ってほんとに気持ちいいよね～🍃💕配信見ながらまったりしちゃいそうだけど、うさピョンの元気な声で目が覚めるよ～！😆💤笑　今日も一緒に楽しもうね～🎶次の展開もワクワクしながら見てるよ～！✌️😊🌸"

"うさピョン、もうお昼だね〜🌞✨午後のひとときを一緒に過ごせるのが嬉しいよ～😊🍃今日は何か特別なことがあるのかな？楽しみにしてるよ～！🐰💕最近のダンジョン探索は面白くて、あっという間に時間が過ぎちゃうね！これからも応援してるから、頑張ってね～✌️😆🌟"

"俺の息子も一緒に見てます🫡"

"うさピョン、俺と結婚してくれ！！"

"ピョンにちは！🌟✨午後のひとときにうさピョンの配信が見られるのが楽しみだよ～😊🎮最近の配信で気になったことがあって、今日もそれに触れてくれるといいな～！楽しみにしてるね～！応援してるから、ファイトだよ！🐰💪💖"

"今日のパンツ何色カナ❓"

　本当、キモい奴らしかわかねェなあ。

　全くよォ。

　俺は文字を打ち始めた。

"うさピョン、ごめんね～😔💦最近ちょっとお財布が厳しくて、これ以上スパチャできないんだよ～😅💸でも、心から応援してるからね！😊🌟配信は毎回楽しみにしてるし、これからも元気いっぱいで頑張ってね～🐰💖またお財布が元気になったら、スパチャするから待っててね～✌️😄💪"

　俺は送信した。

　赤スパしてェ〜。

　もっと、うさピョンに認知……。

　ん、待てよ。

　慌てて飛び起きた。

「そうじゃねェか……ダンジョン配信者になればいいじゃねェか！！」

　こんな簡単なことをなぜ今まで思いつかなかったのだろう。

　俺は伝説のダンジョン探索者。

　そんな人が配信を始めたら、バズるに決まっている。

「よし決めた、俺、ダンジョン配信者になる！！」

　これは、金が底を尽きた伝説のダンジョン探索者が、ダンジョン配信者として奮闘する物語！！