マンション前の女の子

天川裕司

マンション前の女の子

タイトル:マンション前の女の子


ある日、僕が学校から帰ってくると

マンションの前に女の子がいた。

天気が良いのに傘を手に持ち、

ロビー前の花壇の所でじっとしている。


変な子だなぁなんて思いながらその子を見ていた。

歳は僕と同じぐらい。

小学校高学年と言ったところか。


でも僕がその子を見ていたもう1つの理由は、

「ふーむ。にしても、めっちゃ太ってる子だなぁ…」

と言うもの。


そうやってちらほら見ていると、

その子は急に僕の方を振り向き、

「あんた、ウチのこと見えんの?」

と言ってきた。

「え…」


「ウチのこと見えんの?」

→「本来なら見えない」

→「幽霊?」

の図式がまた瞬時にして出来上がり、

見ちゃいけないものを見てしまった??

みたいな気になってめちゃくちゃ焦った僕は、

そのまま走ってエレベーターに乗り、

すぐに自分が住んでる5階のフロアへ上って行った。


「はぁ〜焦ったぁ…」とか思いながらも

「…あの子、関西弁しゃべってたなぁ。関西出身だったのかなぁ?」

なんて、その子の事をちょっと思ったりしていた。


そして5階フロアに到着し

エレベーターを降りた時、

「…え?」

太った女の子「ハァハァハァハァハァハァ」

階段で登ってきたのだろうか。

めっちゃ息を切らしながらさっきの子がそこに居た。


「………」

訳わからず黙って見ていると、その子が近づいてきて、

太った女の子「ハァハァ…ちゃうねん、ほんまはな、あんたがエレベーターでここまで上がった時に、すでに私そこにおってさぁ、んで『さっきはごめんな、変なこと聞いて』って言うはずやったんやん!」

「………」


太った女の子「あかんわ。もうちょっと走り早ならなあかんわほんま…!あ?あんた、この話知ってる?」


実は知っていた。


『マンション前の女の子』という怪談があり、

今までと同じような展開で

主人公がエレベーターで

自分の住むフロアに上がった時、

間髪入れず、1階で別れたその女の子が

エレベーター横の階段の所に立っていて、

この子が今言ったように

「さっきはごめんね、変なこと言っちゃって」

とか言ってそのまま階段を降りていくと言う話。


実はその子は、

雨の日にエレベーターで事故に遭ってしまった

女の子の霊で、

よく晴れた日なのに傘を持っているのはそのため。

小学校児童の足でエレベーターと同じ速さで

階段を上ってくるなど有り得ない、

と言うのがオチであり、

その子が霊的存在である事がその時にわかる…

か、もしくはその後になって気づく…

というモノだったのだ。


「……うん、一応、知ってるけど…」

太った女の子「あ、知ってたんや。ほんなら話早いわな。やっぱあかんな、こんな太ってたら階段早く上がってこられへんわほんまに」


「……き、君も、その霊なの…?」


太った女の子「ん?あーまぁ一応そやけどな。こういう子って結構いっぱいおんねん。私みたいに太ってる奴もおったら痩せてる奴もおってさ」


太った女の子「痩せてる奴なら霊力って言うの?まぁそんな力でパッて上がって来れるみたいやねん。もーうちょっと足速なるようにするわ」


太った女の子「そやないとこの話、成立せえへんしwんじゃ……あ、ほんまはそこの階段降りて行くねんけど、このままパッて消えさせてもらうな。じゃあまたね♪」


それだけよーしゃべったこの太った女の子は、

僕の目の前でふっと消えた。


これが、僕が2度目に体験した

『マンション前の女の子』のエピソード。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=fb1uZdloex4

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マンション前の女の子 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ