梨に耳

菫野

梨に耳

梨に耳生ゆる日もあり図鑑など星の話を音読すれば


むかでなりし記憶なけれどかはたれの少女失くした脚を数へつ


ときに波はすあしのわれを海にする境界といふは曖昧な皮膚


誰か知らむ柘榴ひとつぶテーブルがかくも綺麗に咀嚼せしこと


ひとの消ぬ屋敷にて猫足のいす四、五脚ほどのあはきささめき


蓋とれば箱の中では黒髪の女がひとり箱を見てをり


ルリタテハあるいはリボンこほらせて雪の女王の知らぬ悲しみ


ホシベッコウカギバの翅と貝殻をふくむ異郷のごとき手足よ

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梨に耳 菫野 @ayagonmail

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