71.噴火への思わぬ反応
あれこれ調べるまでもなく、領内の火山だった。長らく領地管理していたユーグ叔父様の説明によれば、活火山だが数百年に一度噴火するらしい。
「それじゃ、通常の噴火活動だったのね」
ほっとする。昨日いじった魔法道具のせいかと思ったじゃない。安堵の息を吐いたら、ユーグ叔父様が情報を追加した。
「だが周期と合わない。本来なら百年ほどは噴火しないはずなんだが」
「……やっぱり魔法道具、かしら」
溜め息を吐いた。私が押したスイッチのせいだとしたら、申し訳ないわ。現時点で噴石は小粒で、溶岩もここまで到達しない。避難は最低限で済みそうなのが、不幸中の幸いだった。
「魔法道具が噴火を引き起こした可能性は、高いな」
レオは、問題の魔法道具を持ち込んだ。指差されて、私が押した突起が戻っていることに気づく。つまり、作動して元に戻った。
「もう一度押したら、また噴火するの?」
「危険だから押すな」
「わかってるわよ」
いくら私でも、そんな危険な賭けはしないわ。というか、ご先祖様は何を目的として作ったの? 噴火してもメリットないわよね。うーんと唸りながら、器を置こうとして、突起を避けて逆さに伏せた。
「……何かに似てるわね」
ユーグ叔父様と一緒に現れたセレーヌ叔母様が、じっくり眺めてぽんと手を叩く。
「あれよ! ほら、山の形!」
言われて、お椀型の深い器が山に見えてくる。なるほど、で……上部のスイッチが噴火の合図? ダジャレみたいな魔法道具ね。わかりやすく形で示したのかもしれないけれど、説明書も一緒に埋めてほしかったわ。石板か何かで。
「次に魔法道具を発見したら、絶対に突起は押さないよう注意しないと」
セレーヌ叔母様はまだ発掘されると考えている。私も……正直、まだ出てくる気がしていた。危険なので、現在は主が留守であるお父様達の寝室に、魔法道具を置かせてもらう。木箱を作り、絶対に押さないための工夫もした。
「発掘は一時中止するべきよ」
「だが、あの噴火を抑える魔法道具が入っているかも」
叔母様と真剣に考える横で、駄犬達は大人しく待っている。意見はないのか尋ねると、ユーグ叔父様は「君の意見ならなんでも」と返し、レオも「俺がこの突起を押したら、叱ってくれるかい」と危険な答えを寄越した。
叔母様と顔を見合わせ、互いの伴侶を躾け直すことを誓った。まずは私から! 一発全力で叩く。頬を赤く染め、嬉しそうに笑わないで頂戴。ユーグ叔父様は危険な発言ではなかったので、静かに言い聞かせただけ。なぜかレオを羨ましそうに見ている。
「叔母様……躾に失敗した気がするわ」
「奇遇ね、私もよ」
大きく肩を落としたところに、朝陽が昇った。暗かった空が明けていく光景に、噴火が重なる。大喜びしているのは、赤いドラゴンくらいね。皆に謝らなくちゃ。
だが、朝食後に噴石が降った農地へ向かった私は驚かされた。噴石が砂のように砕けるため、さほど被害はなかったこと。すでに収穫後なので、新しく土と漉き込んで利用すること。この辺は元から噴石が砕けた土と砂が堆積した地域なので、水捌けが良くて助かること。
真逆の反応があり、ちょっと遠い目をしてしまう。そう、ご先祖様はこのために作ったのね。
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