62.真実は闇の中よ
皆が分散し、各方面に噂を流している頃……私はリュシーとカラフルドラゴンズに囲まれていた。
くーん、鼻を鳴らして希望を伝えるリュシーは控えめだ。周囲の竜はそれぞれに、要望という我が侭を振り翳した。火山の熱がある山に行きたい、氷や雪のある山頂を知らないか、水遊びがしたい……多種多様な要望の中に、食事の希望はなかった。
リュシーが普段から食べているご飯が口に合ったらしい。あれ、犬用の食事よ? 彼らの評価によれば、半生の食感が気に入ったみたい。食べたことがない味で、数種類が混じっていると大興奮だった。
作ってくれた牧場の人にお礼を伝えておくわね。半生なのは、リュシーのこだわりだった。日持ちを考えて乾燥させていたら、食べづらいと文句を言われたの。いろいろ試行錯誤して、半生に落ち着いた。保存期間は以前より短いけれど、よく食べてくれる。
リュシーが犬っぽいせいだと思っていたが、どうやら関係なく食べるらしい。毎日これでもいいと平らげる姿は、世話をする馬番を喜ばせた。コリンヌだけでは面倒を見る人が足りなくて、馬番に頼んだのよ。お礼に背に乗せてもらえたとかで、えらく喜んでいたわ。
お互いに利がある関係なら、しばらく任せておいても平気そうね。
彼らのブラッシングを手伝おうと出向いたけれど、よく考えたら毛がふさふさなのはリュシーだけ。他のドラゴンは鱗なので、磨く作業だった。丁寧に彼らの世話をしていたら、数日はあっという間に過ぎる。
磨いた直後に砂を浴びる神経は、ちょっと理解できない。もう一度と強請る赤いドラゴンを「ダメよ、順番だから」と退けた。そこへ伝令が入る。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
「あら」
大急ぎで執務室へ向かう。ドラゴンの世話をするために乗馬服だったが、問題はないだろう。お父様の溜まった書類を手伝わされるレオが、恨めしそうな目を向けた。私だって書類は嫌だから逃げたのよ。私を好きなら我慢しなさい。
「王女フェリステが本当に前王の胤なのか、確認するためにジュアン公爵家が動いている」
「予想できた範囲ね」
「ああ、シャルの予想通り過ぎてつまらないが……アシルを探しているそうだ」
農民として、息子と共に新しい生活を始めた。そのアシル前王を見つけて、確認しようというのね。ばかね、誰の子か証明する方法なんてない。今さら認知しても価値はなかった。もしオータン子爵令嬢が生きていたら、状況は変わっただろうけれど。
「どうします? お父様」
「これに関しては、僕の仕掛けがまだ残っている。任せてもらおうか、シャル」
にやりと笑って、さりげなく書類を遠ざけるレオ。そんなに書類が嫌なのね。まあいいわ、そこまでいうなら任せてみましょう。
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