第2話 頭が良くなったクソガキ
俺が部屋に帰って来ると何故か美少女、女子高生が居た。
いやまあ...その知っているのだが。
でもその10年ぶりすぎるからありえない光景になっている。
1人暮らしの空間が。
どうなっているのだ...っていうか人ってこんなに変貌するものか?
「お久しぶりですね。十色お兄ちゃん」
「...そ、そうだな」
「私、鍛えてきました。しっかり」
「つ、つまりはその。...花嫁修業でも頑張ったのか」
「はい。10年間言いつけを守りました。10年間、貴方だけしか見ていません。10年間、会えるのを楽しみにしていました」
「...」
『コラァ!お兄!とっとと起きろ!いつまでねてんだ』
そんな事を言っていたクソガキだった。
何で人ってこんなに変貌するの。
怖いんだけど...っていうか。
あまりに美少女過ぎて目が痛い。
どうしたら良いのだ。
「あ。お兄ちゃん」
「は、はい」
「はい、って。お兄ちゃん。私は年下です。敬語は止めて下さい」
「まあ常に敬語を使わないといけない会社...じゃない。取り敢えず敬語が好きなんですよ」
「お兄ちゃん。敬語を止めない限りは私は言い続けますよ」
「わか、分かった」
俺は慌てて敬語を止める。
すると頷きながら笑みを浮かべた湊。
何でこんなに可愛いんだよいちいち仕草が。
イカン。
18歳とはいえ女子高生だぞ相手は。
「なあ」
「はい」
「...何をしに来たんだ?10年ぶりに」
「それは勿論、お兄ちゃんと同棲する為に来ましたよ?」
「ぶっは」
噴き出してしまう。
それから俺は頭を左右に振る。
そしてまた湊を見据える。
「あのな!18歳じゃ早すぎるし俺はあくまで25歳だぞ!」
「それがどうしたのですか?」
「そ、それがどうしたって」
「民法では18歳で結婚出来ます」
「そうですね...いや!倫理的にマズイ!」
「それが?」
「い、いや。だから...」
「結婚しましょう」
俺に笑顔になる湊。
コイツマジかよ。
そう思いながら俺は咳払いをする。
それから首を左右に振る。
「おじさんとおばさんが反対するだろ」
「しませんね。了承済みです」
「早いわ!根回しが!」
「私はあくまで覚悟の上。そして子作りもそのうち検討しましょう」
「ぶはぁ!!!!!」
コイツ!こ、コイツ!
あの...コウノトリしか分からなかった様な女児が!
ありえない...けど。
時間が経ったんだな。
「...まあ話は逸れて。お前いつ帰って来たんだ」
「私ですか?3か月前ですね」
「え?その間は?」
「準備です。同棲準備ですね。学校も変えました」
「...お前マジにやるの?同棲」
「だって私、家を出ましたもん。苗字を1つにするのも大変ですからね」
湊は胸を張りながら...というか。
メロンの様なデカい胸を張りながら笑顔になる。
俺は真っ赤に赤面してからそっぽを向く。
「私、お兄ちゃんの為に10年間頑張ってきたんです」
「...というと?」
「学校も高度な経済学を学びました。修了したのでこっちで大学に通います」
「...というと...」
「私は結構頭が良いので将来は弁護士になります。...というか...お兄ちゃん。貴方に苦労を掛けさせない為に株もやります」
「...お前まさか...今までの話からするに」
「私、結構資産があります」
「...え?どれ、どれぐらいだ...」
「株式で儲かって配当金を含めると10億円ぐらいですね」
何でそんなに資産が...。
俺は青ざめる。
俺の預貯金の数億倍!?
そう思って居ると湊は笑顔になった。
「全て貴方に苦労を掛けさせない為です。幸せの愛の巣を作りましょう」
「...そ、その。10億は何処にあるんだ」
「あ、スイス銀行、仮想通過。まあ色々です。日本じゃ持てるのも限界があります」
「...」
夢ですかねこれ。
そう思いながら俺は青ざめたまま聞いてみる。
「お前...その。何でそんなに金が儲かる」
「言いました通りですがお母さんも支えないといけません。だからこそ頑張りました」
「...ありえない...」
「お父さんはどうでも良いとして。お兄ちゃんと愛の巣を作るのに邪魔にならない様にしました。頑張りました。コツコツ2年ほど株の変動を見て勉強しました」
「...株とか全然分からん...」
「...あはは。ですよね。...でもお兄ちゃん。全ては貴方の存在があったからこそですよ。私の...今が有るのは」
湊の家は金持ちではない。
何というか母子家庭だ。
だからこそ俺が見ていた頃があった。
まさかこんな事になっているとは。
「...お前、学校では何て言われているんだ」
「お嬢様学校でしたけど。鬱陶しかった部分もあったので普通の大学、学校に行きます。一応、天才の天女というあだ名がありますけど。鬱陶しいですね」
「...」
「私はおにいちゃんしか見てないです」
「...男子とかに言い寄られたのか」
「あんなの相手にすらなりませんよ。未熟な子供ばっかりです」
「...」
この10年は彼女にとっては劇的なものだった様だ。
俺はそう思いながら顔を引き攣らせる。
すると湊がいきなり俺の手を握った。
それからズイッと寄って来る。
「お兄ちゃん。今の会社、辞めましょう」
「...へ?」
「もう十分です。働く必要は無いんですよ」
「...だ、だけど」
「ブラック企業だって聞いてます。そんなのゴミにも値しない。辞めましょう」
「...」
俺は溜息を盛大に吐いた。
それから考え込む。
そうしていると涙がポロポロ流れた。
あの会社からようやっと逃れれる。
そんな考えが浮かぶ。
「お兄ちゃん...」
「...甘えて良いか。俺は別のホワイトな仕事がしたいんだ」
「...はい。お兄ちゃん。でもそれをする必要もない。無職でも構いませんよ。株の配当金が入って来ますし」
「いや。それは俺の心が許さない。だから頑張る」
「...そうですか。お兄ちゃんのそういう所が大好きです」
そう言いながら涙を拭ってから立ち上がる。
それから辞表を書き始めた。
取り敢えず会社を変えてやり直そう。
人生を。
今の会社は俺には...合わないから。
死にたくないしな。
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