第9話 〇〇町

 私の住んでいる地区にはとある昔話があります。親が言うには他の県に住む人はもちろん、ネットに乗せるのなんて禁忌扱いらしいのですが、脚色や省略も交えて話してみようと思います。ですが一応自己責任で読んでください。


 昔この地域にとある双子がいたそうです。この二人はとても仲が良くて親や町の人々からも愛されていました。(分かりにくいのでAさん、Bさんと表記します。)常に二人一組で行動していた彼女らでしたが、時間が経つに連れて人との出会いを広げた結果、二人が次第に一緒にいる時間が減っていくのは必然でした。

 ある日、Aさんが行方不明になりました。もうAさんBさんが早く見つかるようにと毎日神社に行ってお参りを繰り返していたそうですが、何日経っても手掛かり一つ掴めなかったといいます。

 もう一度声を聴きたい。その僅かな希望を夢見てAさんは糸電話を作り、一日も欠かさず語り続け、耳を当て続け、何年も何年も待ち続け、そして行方不明から30年後、ようやく二人は再会しました。

 でも、待ち続けたAさんは惜しいことにその一日前に病気によって亡くなってしまい、双子が会話をすることはありませんでした。火葬する直前、双子のもう一人は自分の大切にしていた赤色の色鉛筆を棺桶に入れ、火葬されたその灰は海にまかれました。

 Bさんはそれから海を見るようになり、海辺に映る自分をAさんと重ねて毎日何時間も話し続けたといいます。そんなとき悲しみに暮れていたBさんに奇跡が起きました。

 海辺に落ちていた貝殻からAさんの声が聞こえてきたのです。そしてAさんの声につられてBさんは海の底に沈んでいきました。


 これで話は終わります。この話があるためこの地域では青色の物は不吉と思われています。でも思うはずです。なんで行方不明になったのか、なんで海の底に沈んでいったのか。

 それは今までの妄想達が知っているはずです。


 ※これは私の妄想です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る