文学少女とサッカー少年
みたらし団子
第1話 : 4月
「柴崎って、ほんとに『ザ・文学少女』って感じだよね。」
「えっ?」
私は少し首を傾げて、図書カウンターに寄りかかっている彼を見た。整った顔立ちの彼は、そんな無造作な姿勢さえも様になっている。
「いや、なんかさ。もう見た目が。」
「どういうこと?」
「ほら、黒髪ボブに丸メガネ、ゆったりしたカーディガン。それに図書委員もやってるし、もう型通りの文学少女って感じだよな。」
「あー、そういうことね。まあ、読書が好きだから否定はしないけど。でも、山田くんだって文学少年には見えないよね。サッカー部のエースが図書委員って知ったときは、私も意外だったもん。」
「俺、昔はそんなに読書好きじゃなかったんだよ。でも、ある誰かさんがきっかけで読書にハマったんだよね。」
「ふーん。」
その意味ありげな言い方が、妙に気に障った。まるで「聞いてほしい」と言っているかのようじゃないか。
山田透。入学早々、イケメンだと高校で女子の間で騒がれていた。確かに私も最初見た時はドキッとした。でも、どうせ彼も中身はただのチャラ男だ。だったら、気をもたせるようなことをしてはいけない。弱みを決して知られてはいけない。
私は手元の本に再び視線を戻す。
4月。人気のない放課後の図書館。
窓の外では、満開の桜の花びらが一枚、また一枚と静かに散っていた。
文学少女とサッカー少年 みたらし団子 @janeausten
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