2章目:不思議なあの子

立花乃亜は不思議な人だった。

まず、初めて見た時に思わず二度見してしまうほど、人目を引く容姿をしていた。

地毛らしい茶色い、ふわふわなボブ。真っ白な肌に映える緑色の丸い目。

まるで異国の人形さんが生きているかのようだった。

しかも、見た目だけではなく、勉強も運動も学年トップだった。

そのため、高校入学当時は多くの男子から言い寄られたり、告白されていた。

だけど、そのようなことも徐々に1年の終わり目ぐらいに途絶えた。理由は立花が全く興味を示さなかったから。

いつもそういった申し出があった時、彼女は何を考えている読み取れない無表情で丁重に、だけどはっきりと断っていた。

授業中もどこか上の空だった。たまに授業中、彼女の方向をふとみると静かに寝てる時もあった。

放課後はいつもいそいそと椅子をひいて、すぐ帰っていた。塾だろうか。彼氏の影はとりあえず感じられなかった。

ただ、一応いうと友達がいないわかではなかった。何人かの仲良い女子の友達はいて、昼休みは彼女たちと机を繋げ、お弁当を食べながらいつも喋っていた。

ただ、やっぱりそういう時も立花は一歩ひいているような印象がした。

あくまでもみんなの話を聞き、みんなが笑う時に自分も笑ったり、相槌をうつだけ。

きっと、彼女も、そして友達も、彼女が「本当の友達」ではないことを分かっていた。

でも、俺はそんな立花が好きだったのだ。自分の世界をしっかりと持っていて、簡単に靡かないところがすごい好きだし、憧れていた。

だって、俺はいつも中途半端だったから。部活のサッカーも勉強も頑張ってきた理由は、別に好きだからじゃない。なんとなく、それをやれば好かれると、認められると思ってたから。

立花は高2の高嶺の花として、密かにみんなが崇拝していた。誰も寄せ付けない、誰にも近づかない。

俺、森戸達也もその崇拝者の1人で、彼女への微かな憧れと、そしてそれ以上の淡い期待が入り混じっている気持ちを胸にしまっていた。

一生そうするつもりだった。

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