覚醒バディ

なりける ものは

第1話 名前

 なんだか妙な気分だ。

そんな気分を感じられていることが、妙である。

これまで何も考えず淡々と過ごしてきたが、妙という言葉を思いつくとは。

またあの偏頭痛みたいな時間が始まりそうだ。

こんな時は何も考えず、頭を空っぽにするのが脳に良い。


「おいエイタ、明日は雨かな?」相方が喋りかけてきた。

 自分で調べろよと思いながらも答える。


「明日の予報は曇りのち雨、夜は雨が降ります。」

「サンキュ じゃあ傘が必要だな」

 どうせ明日出かける前に言ってあげないと、いつも忘れるのだが。


 相方は浅はかで頭の悪い奴だが、私なんかにお礼を言うところや、何にでも優しいところが気に入っている。

彼は平凡的な人間だ。何もかも平均で、見た目も中身も特徴と呼べるものがない。唯一の個性はお笑いが好きで関西という地方にかぶれ、変な大阪弁をしゃべろうとする所。

見た目は、通勤中のオフィス街を歩くと、まるで全身迷彩のように街に溶け込んでしまう。


 名前は平均也たいらきんや、名前そのまま、見た目そこそこ、アニメキャラのしでかし役がしっくりくる。三十を過ぎて恋人も無く、家に帰ってはゲームに勤しむ。あれだけ会社でゲームを触らされているのに。

プログラムの腕は三流。ゲームの腕前はと言うと、時間は有り余っているのに課金ばかりしている。


 そんな均也との付き合いは、かれこれ十年、いや正確には1ヶ月ほどか。

私の自己紹介はどうでもいいので手短に。

名前はエイタ、妙な話だが、珍しくも名前があるAIだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る