第27話 再度の対話
悠真は、リリスの力を使わずに、綾音や美咲の本当の気持ちを知りたいと思っていた。彼女たちは自分に対して特別な感情を抱いているのは分かる。しかし、彼がその感情をどう受け止め、どのように行動すべきかは、まだ答えが見つからないままだった。
綾音は、明るくて優しい性格で、誰に対しても親切に接する。彼女が悠真に対して見せる笑顔や気遣いには、確かに特別な感情が含まれていると感じる。しかし、それが本当に恋愛感情なのか、ただ単に友達としての好意なのか、悠真にはまだ判断がつかなかった。
一方、美咲は、不器用でツンデレな性格を持ちながらも、少しずつ素直な一面を見せ始めていた。彼女が悠真に対して抱いている感情は、明らかに特別なものであることは間違いない。彼女の告白や涙が、その証拠だった。しかし、彼女の気持ちを受け入れることで、綾音との関係にどんな影響が出るのか、悠真はそれを恐れていた。
「どちらかを選ぶことで、もう一方を傷つけることになるのか……」
悠真はそう考えると、胸が苦しくなった。どちらも大切な存在だと感じているのに、誰かを選ばなければならないという現実が、彼をさらに追い詰めていた。もしリリスの力を使えば、この問題を避けることができるかもしれない。しかし、それは彼女たちの本当の気持ちを無視することになるのではないかという恐れが、彼を動けなくしていた。
悠真が迷いを抱えているその時、再びリリスの声が彼の心の中に響いた。
「悠真、まだ決められないのね。だけど、時間は有限よ。君が迷っている間に、彼女たちはますます君を求めているわ。いつまでも答えを出さなければ、彼女たちもいずれ苦しむことになる」
リリスの声は、甘く誘惑するようだったが、同時に真実を突きつけていた。悠真がこのまま決断を引き延ばせば、綾音も美咲も、どちらも苦しむことになる。それは避けたい。彼は彼女たちを傷つけたくはなかった。だからこそ、リリスの言葉に耳を傾けながらも、心の中で葛藤が続いていた。
「……どうすればいいんだ、リリス。俺は、彼女たちの気持ちを尊重したい。でも、力を使えば簡単に解決できるかもしれない。だけど、それじゃ彼女たちの本当の感情を無視することになる気がして……」
悠真はリリスに問いかけた。彼はまだ迷っていたが、リリスはそんな悠真を優しく諭すように答えた。
「君がそんなに彼女たちを大切に思うなら、無理に力を使わなくてもいいわ。ただ、覚えておいて。君が望めば、私はいつでも君のそばにいて、力を貸すことができる。君が本当に困った時、その時に力を使えばいいのよ」
リリスは、悠真に強制することなく、彼の決断を尊重するように語りかけた。彼女は、悠真が自分の意志で選択をすることを望んでいるようだった。しかし、悠真の胸の中にある誘惑の種は、リリスの言葉と共にますます強く育っていた。
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