第12話 霧崎美咲
霧島美咲は、学年でも目立つ存在だった。彼女は小柄でスタイルが良く、黒髪のツインテールが特徴的な美少女だ。成績優秀でありながら、運動もできる万能タイプ。だが、それ以上に美咲を際立たせているのは、彼女のツンデレな性格だった。
彼女は冷たくそっけない態度を取ることが多く、誰かに親しげに接することは滅多になかった。それでも、隠しきれない可愛らしさが周囲の男子を惹きつけ、憧れの的となっていた。そんな彼女が、ある日、悠真の前に現れた。
昼休み、悠真が校内を歩いていると、体育館裏の人気のない場所で、何やら物音がした。気になって足を止めると、そこには数人の男子生徒が、霧島美咲を取り囲んでいる様子が目に入った。どうやら、彼女に対して不当な要求をしているようだった。
「なんだよ、お前。さっきから全然話に乗ってこないじゃん? 一緒に飯でも食おうぜ」
「そうだよ、そんなにツンツンしてると、可愛げないぜ?」
男子たちが彼女をからかいながら、じりじりと距離を詰めていた。美咲は困った顔をしていたが、強気な態度は崩していなかった。
「……うっとうしい。あんたたちなんかと、一緒に食べるわけないでしょ。どっか行きなさいよ」
美咲のツンケンした言葉に、男子たちは笑っていたが、明らかに彼女の反応を楽しんでいる様子だった。このままでは、美咲に危険が及ぶかもしれない。悠真は迷うことなく、リリスから授かった「書き換えの力」を使うことを決意した。
「おい、やめろ」
悠真は冷静な声で彼らに声をかけた。男子たちは振り返り、悠真を見るなり、不機嫌そうな顔をした。
「なんだよ、お前。関係ないだろ」
「陰キャのくせに、なんで出てくんだよ?」
だが、悠真は動じなかった。彼は心の中でリリスの力を呼び起こし、瞬時に状況を「書き換え」た。男子たちの心に「恐怖」を植え付ける――それが彼の狙いだった。悠真はリリスから与えられた力を使い、彼らに無意識のうちに恐怖感を抱かせた。
次の瞬間、男子たちは明らかに落ち着かない様子になり、顔を見合わせた。何か異常な感覚に襲われたかのように、彼らは突然、動揺し始めた。
「……なんだよこれ、気味悪い……」
「行こうぜ、ここ、なんか変だ」
そう言って、彼らは一言も謝ることなく、その場を去っていった。
美咲は驚いた表情で、男子たちの背中を見送った後、悠真に視線を向けた。彼女の目は疑念と感謝が混じったような複雑な色を帯びていた。
「……ありがとう。でも、別に助けてくれなんて頼んでない」
その言葉通り、彼女はそっけない態度を崩さなかったが、悠真はそれに対して不満を感じることはなかった。彼女のツンデレな性格を知っていたからだ。
「頼まれてないけど、困ってたんじゃないのか?」
悠真は淡々と答えた。その冷静さが逆に美咲に刺さったのか、彼女は少しだけ顔を赤らめた。
「べ、別に困ってなんかないし……でも、一応お礼は言っておくわ。ありがとう」
そう言うと、彼女はツンと顔をそらし、逃げるようにその場を去っていった。悠真はその後ろ姿を見送りながら、彼女との距離が少しだけ縮まったことを感じていた。
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