百合ゼリー(一口サイズ)
食券A
1口目
黒を照らす鈍光
目が覚めると、またこの世界だった。
正直当たり前なのだが、目が覚めたら世界が変わっていないか、なんて考えを抱いてしまう。
視界は灰色と黒で染められており、耳にはずっとノイズが走る。
スマホの画面もなんだか歪んでいて、テレビに映っているタレント、アイドルなど全て同じに見えてしまう。
そういえばお腹がすいた。
棚からカップ麺を取り出し、お湯を入れる。
口に運ぶが、特に味も感じられない。
あぁ、暗い。
「ただいま〜」
そんな世界の唯一の光が彼女だ。この人の顔だけは私の目にもはっきり映るし、この人の発する声だけは私の耳にもしっかりと聞こえる。頭を撫でてくれる手の感触も感じられるし、心地よいという感情が私の心を満たしていく。
「今日もいい子でお留守番できた?」
彼女の声が耳を通り越して直接脳に行き渡っていくような感覚を覚えると同時に、快感が私の身体を這うように包み込んでいく。その気持ちよさをもっと求めるように、彼女に私を預けていく。ベッドに寝転がっている彼女の肢体の感触と体温が直に私の肌に伝わってきて、そのまま蕩けてしまいそうになる。
「んふ、可愛いね。」
彼女が私の体を抱きしめてくれる。でも足りない。もっと、もっと彼女を感じたい。彼女の視線を独り占めしていたいし、彼女の声を私の脳に永遠と響かせていたい。彼女と隙間なく触れていたいし、彼女の望むままに触れてもらいたい。
「これからも、私だけのいい子でいてね?」
「ん。」
当たり前だ。この人のいない世界なんて、私にとっては心底どうでもいいのだから。
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