世界を救ったのでお姫様を頂いていきます。

緩音

第1話

 私の名前は瀬名せな沙月さつき。普通の高校生....だった。一年前までは。


 ある日の学校帰りに私がタピオカを飲みながら歩いていると横からクラクションが鳴り響いて、横を見るとトラックが猛スピードで私に近づいてきていた。強い衝撃の後目を開けるとそこは異世界だったのだ。

 困惑しているとまるでおとぎ話に出てくる聖女みたいな白い服を来た人がこの世界についていろいろ教えてくれた。

 彼女によるとこの世界は今魔王と呼ばれる存在に脅かされていて私は勇者として召喚されたのだと。その説明を聞いた後私は女神と自称する存在と夢の中で出会い、彼女からこの世界で生きていくための術、主に魔法とかを教えて貰った。それからなんやかんやあり、魔王を倒してこの世界を救った勇者となったのが今の状況だ。

「勇者様ー!」

「ありがとう!」

「キャー!!!」

 今は魔王を討伐したパレードの最中だ。王国中を馬車に乗って巡っている。よくわからないまま魔王を倒す旅に出たけどみんなが喜んでくれるならこの旅をしてよかったと思う。それにいい出会いもあったし。

「重ね重ねになりますが本当にありがとうございました。」

 私と一緒に馬車に乗っている小柄な金髪の美少女が言った。彼女は最初にお城で出会った聖女さんで、私の旅に主にサポートの役割でついてきてくれていた。

 召喚した勇者だけに戦わせるのは身勝手すぎると王様に反抗して旅についてきてくれた彼女は実は聖女ではなくてこの国のお姫様だった。そんな話を魔王との戦いの直後に言われた時は疲れを忘れるくらい驚いたものだ。

いろいろあったけど楽しい旅だったなと干渉にふけると共に欠伸が出た。正直まだ旅の疲れが取れきっていない。パレードが終わるまではしっかりしなければ。

そうしてパレードが終わり私たちは王様に謁見することになった。多くの見物人がいて気恥ずかしい。

「勇者沙月、アリシア。よくぞやってくれた。其方達の努力が無駄にならないよう、この世界の平和を恒久に保っていくことをここに誓う。本当にありがとう。」

王様は私とアリシアさんを見ると王冠を手に取り、深く頭を下げた。周囲の見物人から割れんばかりの歓声と拍手が鳴り響き、見物人たちは王宮の庭で行われているパーティの方に移動して行った。

「よし、全員出て行ったな。」

謁見室には私とアリシアさんと王様だけが残った。王様は先ほどまでの威厳にあふれている顔から一気にアリシアさんのお父さんの表情へと変わった。

「アリシア。よく無事に帰ってきてくれた。」

「お父様.....」

外では王様と聖女としてしか関われない二人もこの場では普通の親子だった。約一年ぶりの再会だし私は空気になろうとそっと部屋を後にしようとすると王様が私に話しかけてきた。

「そうだ。沙月殿よ。なにか褒美を与えたいのだがどんなものが良いだろうか。」

「褒美ですか....」

そういえば魔王を倒す系の物語なら何か褒美を取らせるのがお約束だな。

「土地でも良いし、貴族の位を与えてもよい。」

「そうですね....」

私は手を顎に当てて思案する。元の世界には女神様の力で戻れるらしいから土地とかもらってもなんだよな。かと言っていらないと言っても納得してくれないだろうから......

 考えに考え抜いた結果、私は。

「アリシアさんを私にください。」

「沙月殿!?」

「勇者様!?」

二人は驚いている。まぁだめなら諦めるけど。

「そ、それは本気か?」

「はい。」

「アリシア。お前の気持ちが一番大事だが.....」

アリシアさんは赤くなった顔のまま上目遣いで「不束者でがどうぞお願いします.....」と消え入りそうな声でOKをくれた。


その日の夜。

「ほらアリシアさん、おいで。」

「はぃ....」

毛布をめくってあげると恐る恐るアリシアさんが私のベッドに入ってくる。私が(強引に)頼んで添い寝をしてもらうことになった。アリシアさんは「本当に大丈夫ですか?」と目で訴えかけながらも私の左腕に頭を置いた。

「なんでそんな緊張してるの。野宿の時は一緒に寝たこともあったでしょ。」

「....その時は状況も状況ですし、そんな意識することもなかったから.....それにこんな距離も近くないですし。」

アリシアさんは照れた顔を隠すようにして私の胸に顔をうずめた。アリシアさんの身長は目算で155くらいで、私は170弱と少し大きめなので抱き着くといい感じにアリシアさんがすっぽり収まる。

「幸せ。大好きだよ。アリシアさん。」

「.....私もです。」

「じゃあ寝よう。電気消すね。」

部屋の電気を消してからアリシアさんのおでこにキスを落とすと「ひゃっ。」っとアリシアさんの可愛らしい悲鳴が部屋に響く。さらっさらなアリシアさんの髪を右手で撫でながら眠りに落ちた。


「沙月さん。沙月さん。」

大人びた女性の声で私を呼ぶ声がする。目を開けるとそこには布を身にまとった女性、女神さまがいた。正直布一枚じゃ目に毒だからもっと着こんで欲しい。

「お久しぶりです。女神様。」

「はい。お久ぶりです。そしてお疲れ様でした。いきなりこの世界に転生されてさぞ驚いたでしょうに。厳しい戦いや大変なことも無数にあったでしょう。私はあなたを誇りに思います。」

「いえ。女神様からもらった力が無ければ最初のモンスターに倒されて終わりでしたよ。」

「あはは。もし死んでも生き返れましたけどね。」

「え?」

「え?」

「それで女神様。元の世界に帰る話はいつごろになりそうですか?」

私の知らない能力が判明したけど生き返れるとか怖すぎるから話題を変える。

「あ、それならいつでもできますよ。」

「本当ですか!じゃあアリシアさんと決めるのでまた明日の夢にでも出てきてください。」

「わかりました。では次こそ良い夢を。」

女神様がにこっと笑うと私の意識は薄れていき、数秒後には意識を完全に手放した。

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