三度目の人生
第7話三度目の人生
三度目の人生。
目が覚めると、また私は5年前にタイムリープしていた。
3回目のやり直しだ。
もう嫌だと思った。
このまま死なせて欲しいと思った。
三度目もまた同じ病院で重症妊娠悪阻に苦しみながら目が覚めた。
きっと今までのやり方が間違っていた。
神様は私に死ぬことを許さなかったのだ。
後悔や憎しみを抱きながら苦しんで死ぬのは本望ではない。
私はやるしかないと思った。
今度こそ間違いは犯さない。
……愛する子どもたちを絶対に手放したりはしない。
そう決意して、私は5年前と同じ病室の同じ天井の同じシミを見つめた。
義母がお見舞いに来ていた。
もう、慣れた状況だったが、彼女は相変わらず毒舌だった。
前回の人生で、義母は河合愛梨と上手くやっていけたのだろうか。
そんなことを考えながら、義母のおしゃべりは聞いていなかった。
正直、今更彼女にどう思われようとどうでもよかった。
5年前と同じように、看護師さんが義母を追い出してくれた。
看護師さんは「たいへんね」と苦笑いして、私の体温を測ってくれた。
私は彼女にお礼を言った。
「ありがとうございました」
これは前回も経験したことだった。
「看護師さん。私は食べ物を受けつけません。この差し入れ職員の皆さんで食べて下さい」
義母の差し入れをそのまま持っていってもらう。
「ふふ、ありがとうございます。遠慮なく頂きますね」
一カ月の入院中、義母が何度も見舞いに来た。その都度私は具合が悪くなるので、途中から面会謝絶にしてもらった。
今回はもう義母が病院に来ないよう、早々に面会できないようにしてもらう。
「面会謝絶にできますか?」
「大丈夫、できます。安静にしてもらうという事で面会は断りましょうね」
「すべての人の面会を断ってもらえますか?」
「え、と……ご主人とかお友達とかは?」
「主人の面会も断って下さい。連絡は主人に入れておきますが、もし病院に来ても断って下さい。義母の手前、夫だけ面会できると思われたくないので」
「そうですね……わかりました」
「ありがとうございます。お手数かけます」
人生で三度目に会う、同じ看護師さんだった。
相変わらず、機転が利く彼女は凄いなと思った。
助けてくれる人が病院内にいて有難い。
これで入院期中1ヶ月の間、これからの計画を練る事ができる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。