Last Recrudescence
睡眠者
死人復興
第1話Resolution/--「改」
"The gunshot echoes glory, leading the world towards its progression."
グランドピアノの上で10本の指を思い思いに踊らせている。両腕や指たちが自分で勝手に動けるように、滴りが太股に触れても、この手で零してしまったワインのガラスを拾うこともできなくなった。少し湿っているキーだけど、音調が変わらないくらいは踊る指も死ぬ頭も気にならない。
既存ピースを演奏しようとするつもりはない。浮かぶピースの部分を弾き、次と浮かぶ他のピースの部分を最初からそうしているだけ。新作とも言えないと思うけど、他人の耳には異なるかもしれない。演奏っていうのは、このグランドピアノの音量が意外と派手すぎて、外にも流れて聞こえると思うけど、脇道に歩く人の思いは分からないね。
音楽が得意な人じゃない。クラシックが好きで今弾こうとすると披露すれば、きっと桜井が批判を嫌味として伝える。音楽と言えばあの人に比べたら、自分に限らぬ他人も素人になる。別にミュージシャンでもなく、アーティストでもなく、音楽が好きな学者に過ぎない。
学者として楽に紹介するのが辛くなってきた、数時間前まではまだ政治家であったものだから。政治家と学者は完全に対比する”仕事”と言うわけはないが、事実から見極めると本当に対照する、特に誠の話にすれば。嘘をつかないようにしてみても、結局嘘をつく、嘘をつけられずにはいられない職業だから。誠実さもなく”研究”する学者は永遠にいるけど、政治家に比べたらもちろん違う。それで、その2種類の悪人たちがよく協力しているって、最低だね。
純粋な現実を民衆に知らせてみたら、どうなるだろう。政治家のことなら多分大半以上知っているけど、学者のことなら別の話になりそうだ。教授として働いた時、高校生も大学生も明るい希望に満ちられるように、その職業を狙ってみた。そして、一般人と会話する時は批判が少なくて、賛美や感謝も聞きくたびれていた。恐らく、命を救える医者や消防士と同じ、学者がある意味で”英雄”とされる、全く普通の仕事なのに、その全てが。
汚職的な政治家の話は一夜では終えられないから、自分の経験だけを思い出せようとしたいけど、それも一夜だけではできない、汚れすぎるから。必死に汚れを避けようとしたけど、順調にはできなかった。それによって、俺も少数者に嫌われている、値にするから大丈夫だったと思う。
子供の頃から、きっと他人も同じく、男子として生まれたからって、ずっと勇気を出してとか困難を超えてとか苦痛を耐えてとか家族を守れとか、負担が重くドグマ同等の詰まらないことを受け継いでばかり。男とか真面な人なんかそんなものが必要なのかって、その答えを探しながら、淀んだ社会に目を凝らせば、ああクソ現実だなと呟き、答えを手に入れたみたいだ。
ここは心地よい場所だと、指が踊るほど段々気付いていく。広くて暗い部屋、涼しくて穏やかであり、大きな窓から射す明かりが綺麗だ。身を潜めるには最適な場所、ネットでは匿名を利用しているようだ。ここでは有名な人物じゃなく、意味のないメロディーに捕らわれている人に過ぎない。
外に出れば、事件が起こる気がしないけど、前の事件のためか、坂田だけじゃなく、桜井までも外に出るのを厳格に禁止している、故にこの部屋に一人で閉じ込められている。時には桜井が見舞いしたりするけど、今はただ一人、複数の楽器、高そうな絵画、最新のデスクトップやゲーム機、山ほどのスナックとビバレッジ、食器や容器、道具や文房具、めちゃめちゃな衣装、錠剤、他の名前が知らないものも沢山ある。
区別や相違がないように、国民と面会するアプローチに夢中なポピュリズムを自慢する政治家がよく見られる、区別か相違が極めて大きくあるのに。嫌悪しすぎる反面、自分もそう酷似するアプローチもしていた。身近に見えるし、まあまあだし、大事なのは政治家同士と会えなくなるから、学校や文化財やスポーツ庁の活動を訪問したりするような文部科学省になってきた。
山ほど積もってきた未読のメールや手紙、詳細は知らなくても、要は様々な匿名脅迫。気にもしなかったけど、対戦の現状が悪化すると、殺害予告も届けられ、日本に限らぬ多くの政治家も狙われていると聞いた。教育や文化を担当しているからといって、きっと大丈夫だと思っていた。きっと同じ立場にいる人もそう思う。
国民不在のようだが、ある意味はそうじゃなく、同時にそうであった。深夜の頃、安全性の原因の飛行遅延のため、ソウルで周りを見に行った。新興国の首都では貧困率や犯罪率が比較的低いが、一度その側面を見たら、心が酷く驚いた。誰も責めても見下ろしてもしない、そもそも現状は自国の積悪のためだった。
それに伴って、世代憎悪が続いて強くなって、さらなる積悪を促せ、虐め、差別、強姦、殺害、全てが気付くべき現実なのだ。直接体験は子供の頃から既に何度もあった、気付かずに罪人かもだった。正義を問いかけば答えが出られぬ、求めば満たされぬ、変化すれば逆行だ。やがて、あの夜に鋭い憎悪が自分に向けられていた。
韓国語が流暢な人だから、余所者であった当時の人の言った言葉を完全に覚えている。刃物を刺すのは速かったが、国の栄光や苛まれた母親の雪辱だ、前に叫んだから、危なくても避けていた。50年代の男、大戦の始まりからは無職で、貧困家庭の生まれだった。周りは傍観者と見えたが、当たり前の反応だ、逮捕された憎悪に満ちた男も理不尽じゃなかったかも。
ニュースに流れ、民衆の反応が分極的だった。影響されたのは民衆の見方だけじゃなく、政治家もそれによって新しい方向に動き始めた。殺害未遂は必ず民国支援を招くか減らすものじゃなくても、オポチュニストの世間なら違うよね。
省庁全部にプロパガンダの担当や責任を戦時には背負っている。オリンピックはただ理念の競争に過ぎぬ、文芸はただ若者への武器に過ぎぬ、学会は国の利益のためのドグマの発想に過ぎなかった。拒絶しようとしても、順調にはできなかった。しなければ、すぐに辞任させられ、後任が悪い人であればもっと暗くなるから、できる限りプロパガンダを縮めて、ポジションを保とうとしていた。
省庁全部が首相に呼び出され、全体会議の前だった。つまらなかった一日だから、真面目に聞き取らずに出席していただけ。辞任のことが知らされずとも、状況を見極めて分かったから、話せる時は異論を正直に言った。要するに、政治家と民衆に反対していても、正しくあれば隠さずに、誇らしく言った、危険を招くとしても。
日本の政治は腐るものだ。確かに他国にも政治といえば屑のような思考が出るけど、日本の特性もあるのではないか。分析すれば分析するほど、みんな老いているねって、女なんかいねえって、前任の親戚ばかりじゃねって、それに気付くようになったのだ。他国にもいるけど、常態化できないものだろう。自分なら若いからいいけど、まあ、考えればいいのはそれだけかもしれない。
驚きに満ちていた24時間だった。過去ばかりで後先を考えずに、この指たちが踊り止まらないの。朝日が昇るまでは後数時間、夜更かしの騒がしさはもう消えたくせに、まだ明日のことを考えておらず。時間の流れが責任のない時にはこんなに速くなるのに気付いたのはもう何年ぶりかな。グランドピアノを弾くばかりで、まだ夕飯を触っていない、美味そうでも触りたくないな。
指の踊りを止めたくないほど、止めさせるものをついに望んでいる。心地よくても、残る責任はまた負担になる。だけど、どんな責任だって、知らないの、あると分かるけど、形は全然知り得ないみたいだ。不思議に疲れはない、指の痺れも痛みなんかも、もう数時間過ごしたのに、あるのはただ消えない悩みだ。何もしない他人を見れば楽しそうだと思ったけど、自分でやってみればこんなに辛くなる。
偲べる過去は遠すぎる過去だ。世間が楽観的な自分と合えば、やつは何を言うのだろう、きっと鬱陶しそうな顔をする。政治家になるなんて、変化を促進するためのくせに、変化は一つもなかった。学者になるなんて、社会に知恵を生えて秀でているためのくせに、愚かなものが増加していた。こんな暗い思いに飲み込まれて、いつの間にか止まった指や伏せる自分に気づかなかった。
思いに夢中すぎて原因を知らなくなって、燃えている熱い火の間に、ドアの向こうに立つ影が段々近づいている。窒息の故か霞み目の故か、姿を見分けることもできなかった。あれはあの人が声を出す前だった、耳がまだ聞けるのはよかったね。
通常の声だから、表情は全然読めなくなり、来る理由も全然分からなかった。前に見舞いしたのは零時で、何も言わずにただ俺の演奏を見ていただけで、少し不気味だった。火災の原因を気にせず、呼吸が痛くなり声が枯れていて、小声で笑ってみた、火と煙が全てを覆い込んでいく頃。
予定してたから見てくれるか、焦りと火事に気づいたから見てくれるかな。正気を失った人みたいに、運んだ桜井にそう呟いた。
“...”
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます