追放され闇落ちする悪役貴族に転生したので、チートスキル【努力】で最強を目指す〜ゲーム中盤で退場したくないので必死に努力した結果、主人公より強くなったうえ原作ヒロイン達からめちゃくちゃ溺愛されてる
茨木野
第1話 悪役貴族に転生
ベッドから落ちて頭をぶつけた瞬間、俺はとある記憶を思い出す。
俺は都内にあるブラック企業に勤めるサラリーマンだった。
毎日終電まで働き、土日も普通に出勤。忙し過ぎて親の死に目にも立ち会えないほどの、超ブラック企業だ。
ある日、徹夜明けでフラフラの状態で、家に帰ろうとしたときのこと。
道路を渡ろうとしていたお婆さんに、暴走トラックが突っ込んできた。
俺はとっさにお婆さんを突き飛ばして助け……死んだ、はずだった。
「マジかよ。俺、【エタファン】の【マルス】に転生しちまった……」
鏡に映る銀髪イケメンとなった自分の顔を見て、俺はそう呟いた。
鳥肌が立つ。嬉しいからじゃないぞ。……恐怖からくるものだ。
マルス・ノアール。俺が前世で大好きだったファンタジー・アクションRPG【エターナル・ファンタジア】、通称【エタファン】に出てくる中ボスだ。
「まさか主人公じゃなくて、ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族のマルスに、転生するとはな……」
マルスは、闇の魔法使いの名家ノアール家の長男だ。
しかしマルスには闇の魔法に対する才能が一切なかった。家族からは酷い目にあっていた。そのせいで、性格がかなり歪んでしまう。
平民を見下し、権力をかさにきて女に手を出しまくる。
学園の生徒・先生たちから嫌われる、悪役貴族として悪い意味で有名だった。
そんなマルスはゲーム中盤、実家からとうとう追放されてしまう。
失意のマルスは、封印されし邪神【エグゾイド】から、『我に従え、さすれば闇の魔法を使えるようにしてやろう』とそそのかされる。
実家に戻りたいマルスはその誘いに乗ってしまい、邪神の封印を解く。
結果、エグゾイドに体を乗っ取られ、主人公と戦うことになる。
「確かその後主人公との戦闘に負けて、捕まり、監獄の中で発狂エンド……だったっけか」
追放→闇堕ち→暴走からの退場、という、いかにもなやられ役の末路をたどる。
それが、
「そんな生き方、絶対に嫌だ……」
前世でも酷い目にあってきたのに、今世でも同じく散々な目に遭うなんてまっぴらごめんである。
「ん? 待てよ……ここはノアール家の中だ。まだ俺は家を追放されていない……ってことは、俺は邪神を復活させていない」
俺は急いで、今が何年何月なのかを調べた。
使用人に新聞を持って来させて、日付を確認。
「しめた! マルスが学園の高等部に進学前の時間軸だ!」
エタファンは今年の4月、主人公が高等部に編入してくるところから始まる。
「つまり今はゲームが始まる前!」
マルス追放は、主人公との決闘に負けた後に起こるイベント……ここより未来の出来事だ。
「なら、最悪の未来を、変える事ができるはずだ!」
俺はエタファンの大ファンだ。設定資料集・攻略本も読み込んだし、開発者ブログもきちんとチェックしてる。
エタファンのメインシナリオライターが手がけたノベライズ版も全巻揃えて読んだほど。
この
「今の俺なら、運命を変えることができる!」
前世は酷い人生だった分、今世では幸せになりたい。
だが邪神に関わると俺は最悪の未来に辿り着いてしまう。
ならば、どうすればいいか?
「心身を、鍛えるのだ!」
マルスは心の弱い少年だった。
だから邪神の甘い囁きに乗ってしまった。
ならば、邪神の誘惑に負けない強靭なメンタルと、力を身につければいい。
「幸いにして、俺には原作知識と、【チートスキル】があるからな。これらを使ってマルス・ノアールを強化する!」
ひとまずの目標は決まった。
ならば、さっそく行動開始といこうか。
俺は着替えて、木剣を手に取ると、中庭へと向かう。
庭には、赤い髪の女が立っていた。
「フランソアラ」
「ま、マルスぼっちゃま!?」
剣術指南役である、王国の女騎士、それがフランソアラだ。
闇魔法の才能のない俺に対する家族の風当たりはかなり強い。
だが、腐っても貴族の子息。
ということで、父上は俺に剣の指南役をつけたのだ。
ただ、マルスは『闇の大魔法使いとなる自分に、剣術など不要!』といって毎回の朝稽古をサボりまくっていたのだ。
「おはよう、フランソアラ」
「!? あ、挨拶!? ど、どうなされたのですか、マルスぼっちゃま?」
普通に挨拶しただけでめちゃくちゃ驚かれてしまった。
無理もない、マルスは平民を基本的に見下してる。
フランソアラは平民上がりの騎士だ、それも女ということで、かなり下に見ていたのだ。
それゆえ彼女に対して挨拶なんてしたことはなかった。
今までのマルスはそれでよかった。
でも、今の
「フランソアラ。俺に剣を教えてくれ」
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