12 成長する主人公


 強い――。


 マルスは戦慄とともに対戦相手のブライ・ザックを見つめていた。


 さすがは学園の帝王と呼ばれるだけのことはある。


 マルスも学園に入り、授業で鍛えられ、学内トーナメントでも強敵たちと相まみえ、その経験によって強くなった自信がある。


 けれど、ブライは別格といっていい強さだった。


 魔力でも、そして魔法戦闘の経験値や引き出しの多さでも。


(とても今の僕が敵う相手じゃない――)


 弱気がこみ上げてくる。


 先ほどの一撃を受けて、マルスのライフポイントはすでに200ほど。


 次にブライの一撃を受ければ、確実に0になるだろう。


「もう一発食らったら負け――か」


 逆に相手のライフはほぼ無傷だ。


 このボロボロの状態から、一撃も食らわずに相手のライフを0にしない限り、マルスの勝ちはない。


(無理だ――)


 弱気が、諦めの気持ちへと変化する。


「……いや、無理じゃない」


 すぐにそんな自分を叱咤した。


 昔の自分なら、きっとすぐに諦めていただろう。


 けれど、今は違う。


「なんだ、まだ目が死んでねーな」


 ブライが笑った。


「諦めろよ。こっからお前が逆転する目はねーよ」

「諦めない――」


 マルスはブライをにらみつける。


「約束したんだ……彼と決勝を戦う、って」

「ほう?」

「僕は約束を――友だちとの約束を、守る!」

「はっ! 吠えてんじゃねーよ、雑魚が!」


 ごうっ!


 ブライの全身から魔力のオーラが立ち上る。


 今まで以上の強大な魔力――。


 だが、マルスはひるまなかった。


 魔力でも、魔法戦闘の経験値や引き出しの多さでも負けている。


 けれどマルスがたった一つ――ブライに勝っているものがある。


「成長性だ……!」


 魔力は、成長する。


 それは主に精神的な要素によって。


 そして、この『成長性』に関しては、マルスは学園の誰よりも優れていた。


 学園の生徒たちは定期的に己の魔力の測定を行う。


 魔力とは『意志の力』に起因する能力であり、本人の精神の状態によって大きく上下動する。


 その数値が――マルスは入学以来、飛躍的に伸びているのだ。


「魔力とは意志の力……だから、この試合の最中にだって、僕の魔力は成長している」

「ふん、そんな短期間で成長する魔力なんて、たかが知れてる!」

「どうかな……」


 嘲笑するブライを、マルスは静かに見据えた。


「なら、今見せてやる。僕の魔力の成長性を――」


 ごうっ!


 マルスの全身から、今までよりはるかに強大な魔力のオーラが立ち上る――。







****

※本作品の書籍化が決まりました! KADOKAWA・エンターブレイン様から11/29発売予定です。

https://www.kadokawa.co.jp/product/322407001435/

こちらから予約受付中ですので、ぜひ! 新規エピソードも大量に加筆してます!


〇『魔族のモブ兵士に転生した俺は、ゲーム序盤の部隊全滅ルートを阻止するために限界を超えて努力する。やがて下級魔族でありながら魔王級すら超える最強魔族へと成長する。』

新作、ランキングが上がってきました! さらに上を目指すため、フォローや★の応援をしていただけたら嬉しいです! 下のリンクから飛べますので、ぜひお願いします~!

https://kakuyomu.jp/works/16818093085279790322



〇読んでくださった方へのお願いm(_ _)m

☆☆☆をポチっと押して★★★にして応援していただけると、とても嬉しいです。

今後の執筆のモチベーションにもつながりますので、ぜひ応援よろしくお願いします~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る