9 大したものね
沈黙が、流れる。
レスティアはしばらくの間、砕け散った黒い剣を無言で見下ろしていた。
さあ、どうする。
次は直接攻撃で来るのか?
あるいは精神魔法のバリエーションを他にも持っているのか。
俺は緊張感も警戒も解かず、レスティアの次の行動を注視する。
と、
「……ふう」
さっきの俺と同じく、レスティアは大きく息をついた。
「大したものね」
口元に微笑みが浮かんでいた。
「今のは正真正銘、あたしの全力。それを凌がれたら、ね」
レスティアは苦笑交じりに言った。
「あたしの負け。降参するね」
「レスティア……」
「決勝戦、がんばって」
にっこり微笑み、レスティアは自ら闘技場を降りていく。
その途中、一度振り返り、
「ますます君が欲しくなっちゃった。いずれ、また勧誘するからね。我が魔王軍の一員として――」
「断る」
にこやかなレスティアに、俺はそっけなく言い放ったのだった。
こうして準決勝第一試合は俺の勝利に終わった。
俺にとって何よりも大きな勝利だった。
魔王の全力の精神魔法を、俺は耐えることができる。
これで――魔王に『洗脳』される恐れは大幅に減っただろう。
また一歩、俺は生存ルートに近づいたはずだ。
「さて、と。次はあいつの試合だな」
俺は闘技場から引き上げる前に、マルスを勇気づけようと姿を探す。
「あ……」
歩いてきたのはマルスではなく、金髪にツンツン頭、三白眼にピアス――ヤンキー漫画に出て来そうな少年だった。
マルスの対戦相手、『学園の帝王』ブライ・ザックだった。
「よう、久しぶりだな」
ブライが口の端を吊り上げる。
なかなか迫力のある笑みだった。
俺に対してむき出しの闘志を発散している。
「次勝てば、決勝は俺様とお前だ」
ブライが言った。
「借りは返させてもらうからな。帝王の誇りにかけて」
「まずマルスに勝ってから言ってください」
俺はニヤリと笑って言い返した。
「ああ?」
不快そうに俺にすごむブライ。
けど、俺は動じることはなかった。
正直――さっきのレスティアの方がよほど威圧感がある。
彼女と戦った後だと、ブライはまるで子供のように見えた。
「まあ、俺としてはブライ先輩が勝ってくれた方が決勝が楽になるけど」
「てめぇ……」
ブライはますます不快そうな顔をした。
「マルスだと? 俺があんな雑魚の一年に負けるってのか? ああ!」
「勝つのはマルスですよ」
俺は彼の威嚇を真っ向から受け止める。
「俺の友だちは、雑魚なんかじゃない」
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