7 VS魔王
「【ボルティックブラスト】!」
「【ライトニングソード】!」
俺とレスティアは雷撃呪文をぶつけ合った。
威力は互角。
これでもう何度目だろう。
互いの放つ攻撃や防御が、相手の攻撃や防御を打ち消すばかりで、ダメージすら与えられない。
実際、俺とレスティアのライフポイントは試合開始時からまったく減っていないのだ。
「あー……結構めんどくさいね。単純な攻撃じゃ延々と打ち消し合うだけ」
「なら、単純攻撃をやめるか?」
ため息をついたレスティアに俺は誘いの言葉をかける。
「呪術系? あるいは精神魔法? そっちの方が自信あるとか?」
「試してみるか?」
俺はニヤリと笑った。
奴が精神系の魔法を使ってくれれば、こちらとしても願ったり叶ったりだった。
けれど、それをあからさまに告げ、俺の意図を悟られたくない。
いずれ奴に『洗脳』される機会があるかもしれないから、その対応策を『予行演習』しておきたい……なんて気づかれるわけにはいかない。
気づかれれば、向こうもさらに対策してくるだろう。
「挑発? 面白いじゃない」
レスティアもニヤリと笑った。
「別に挑発したわけじゃない。ただ似たような展開に飽きてきただけさ」
俺は平然と流す。
「……ふふっ」
レスティアは薄く笑い、右手を掲げた。
「じゃあ、精神魔法でいってみよっかな」
来た――!
「精神魔法って単純な勝負なんだよね。術者と対象の精神力が強い方が勝つ。術者が強ければ術が効果を発揮するし、対象が強ければ術は失敗、下手すると術者の方が精神的なダメージを負う……」
レスティアが語った。
「で、あたしの精神力に君は勝てるつもり? 言っておくけど、あたしの心は強いよ?」
「俺だって――負けない」
俺は彼女を見つめた。
精神力というのは数値では測れない。
ただ、俺は精神世界での鍛錬で『本来のレイヴン』と戦い、これを乗り越え、以前よりも強力な精神力を身に付けた。
この力で奴の精神魔法を抑え込んでみせる。
「撃ってこい」
「じゃあ、遠慮なく」
レスティアの周囲に黒い稲妻が湧き上がる。
「全力で行くよ」
魔王の全力の精神魔法か、望むところだ。
こいつに耐えられるなら、俺は魔王の『洗脳』にだって耐えられる。
そうなれば、俺は破滅の運命からまた一歩逃れられるんだ――。
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