【書籍版発売中!!!】 死亡ルート確定の悪役貴族 努力しない超天才魔術師に転生した俺、超絶努力で主人公すら瞬殺できる凶悪レベルになったので生き残れそう
六志麻あさ@12シリーズ書籍化
第1章 悪役貴族覚醒編
1 俺はゲーム世界の悪役貴族だった
その日、俺は唐突に前世の記憶に目覚めた。
「俺の名はレイヴン・ドラクセル。ドラクセル伯爵家の一人息子。100年に一人レベルの魔術の超天才。そして――」
スマホRPGに登場する悪役貴族。
「ゲームの世界に転生したのか、俺……」
目の前の鏡を見つめる。
銀色の髪に青い瞳の少年。
整った顔立ちは美少女と見まがうほど。
「前世とは大違いだな……」
前世の俺はいわゆる負け組の人生を送っていた。
勉強もスポーツもまるでダメ。
まったくモテず、彼女ができた経験もなし。
そもそも友人すらいなかった。
やっと就職した先は三流企業で、おまけにブラックだった。
楽しいことなんて全然なかった人生。
朝晩の通勤電車の中でやっていたスマホRPG『エルシオン・ブレードファンタジー』……通称『エルシド』が唯一、俺にとっての楽しみだった。
そうやって毎日、早朝から深夜まで仕事をして――。
そこから先の記憶がない。
もしかしたら過労死でもしたんだろうか?
そして、俺の記憶はレイヴンとしての記憶へとつながる。
転生した、ということはなんとなく分かる。
ここはゲームの中なのか、ゲームそっくりの世界なのかは分からないけど、とにかく『エルシド』に登場する悪役貴族の少年『レイヴン』が今の俺だ。
「……いや、でもまずいよな、これ」
そこで一つの事実に気づく。
レイヴンは『エルシド』のストーリー内で最終的に死亡する。
何パターンか死に方があるんだけど、
1.主人公とのバトルの末に死亡。
2.領民の反乱に遭い、死亡。
3.魔王を呼び出そうと企み、その魔王に殺される。
4.王国を乗っ取ろうと反乱し、捕まって死罪。
主にこの四つだ。
もしこの世界が『エルシド』のシナリオ通りに進むとしたら、レイヴン=俺は必ず死ぬ。
「問題は『エルシド』のシナリオとこの世界の歴史が同じかどうか、だよな……」
現在の俺は14歳。
で、『エルシド』のストーリーが始まる時点でのレイヴンは確か15歳……だったかな?
そうだ、主人公が入学する魔法学園の同級生として登場するんだ。
「で、卒業式の日に主人公と決戦して殺されるんだったな……」
卒業時点で18歳だから、あと4年くらいで死ぬのか、俺……。
「あーあ、どうせなら主人公サイドのキャラに転生すればよかったのに」
なんで、よりにもよって絶対死ぬキャラに生まれ変わったんだ……。
「前世でも今世でも報われないのか、俺は……」
こみ上げてきたのは落胆。
そして、失望。
「なんで俺は……いつもいつも……」
自分自身への怒りに似た感情が湧いてくる。
冗談じゃない。
「このまま死んでたまるか……」
報われない負け組人生の末に死んで、また生まれ変わったら死亡確定ルートで……。
「ああ、そうですか、って受け入れられるわけないだろ! 俺は変えてやるからな! 俺の運命を! 絶対に!」
叫んだ。
魂からの叫びだった。
さて、と。
まだこの世界がゲームのシナリオ通りの歴史をたどるか分からない。
とりあえずゲームシナリオ通りの歴史になると仮定しよう。
そうなった場合、俺は自分の『死亡ルート』を回避しなければならない。
「どうすれば、そのルートを回避できるか、だよな……」
まず一つ目の『主人公とのバトルの末に死亡』。
これは主人公と戦わないことで死亡ルートを回避できる。
……と簡単にいけばいいんだけど。
主人公から戦いを挑まれた場合、避けられるんだろうか?
だいたいゲームのシナリオっぽい歴史だとしたら、いわゆる強制イベントに巻きこまれるかもしれない。
俺の選択肢はなく、主人公と戦うしかない、っていう状況に追い込まれるかもしれないわけだ。
だとすれば、俺が主人公より圧倒的に強くなれば、殺されずに済む……か?
できるかどうか分からないけど、とりあえず次の死亡原因を考えてみよう。
『領民の反乱に遭い、死亡』。
これも領民の反感を買わないよう、悪政を敷かなければいい。
現在、領地を治めているのは父だけど、たぶん一、二年内に俺に領主の座を譲るだろう。
なぜならゲーム内のレイヴンは自分で領地を治めていたからだ。
父が何かの理由で死ぬのか、それとも単に引退するのか……その辺りは不明だが。
悪政を敷かない、っていうのは実現できる可能性が十分にあるな。
よしよし。
次は『魔王を呼び出そうと企み、その魔王に殺される』。
……うん、魔王を呼び出そうとしなければいい。
これも防げる。
最後は『王国を乗っ取ろうと反乱し、捕まって死罪』。
うん、反乱を起こさなければいい。
これも防げるぞ。
となると――一番怪しいのは一つ目の『主人公とのバトルの末に死亡』だ。
二つ目から四つ目に比べ、やはり『主人公とのバトル』はそれだけ強制イベント感が強く、運命からは逃れられない可能性がある。
「じゃあ、主人公とはいずれ戦う……戦わざるを得ない、と考えた方がいいかもな」
そのうえで、どうすれば俺は生き残れるのか。
考え中。
考え中。
うーん……。
…………。
……。
「――って、答えは一つしかないよな」
俺の中で、その答えが固まっていく。
そう、俺がこれから目指すべき道は、
「主人公より強くなる。それも圧倒的に。絶対に負けないくらいに」
ゲーム内のレイヴンはまったく努力せずに最強レベルに上り詰めた天才だったけれど、俺は違う。
「俺は――『努力する天才』として最強を目指す!」
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