ep.38 お母さんの会社
前回のあらすじ
中村は会社の脱出計画を立て、Aたちを集めてチームビルディングを開始する。経理の桃山も加わり、冷静に振る舞う。中村は顧客名簿を盗み出し、合同会社で運用して全員の給料を上げる計画を立てるが、それは犯罪的な行為だった。占いビジネスの顧客は占い師個人に依存しているため、中村は占い師を引き入れようとする。彼はバニラの部屋の隠し扉を開け、そこにベールをかぶった美少女・道玄坂ショコラを発見。彼女こそ中村の計画の最後のピースだった。
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母が亡くなった。突然の訃報により、ショコラは急遽会社を継ぐこととなった。
母親は会社の全ての株を持っており、その株はショコラに相続された。彼女には占いの才能があり、その力は母をも超えると評されていた。
ショコラは未来を予知する能力、過去をまるでその瞬間に起こっているかのように見る能力、他人の感情や考えを読む能力、そして人々のオーラを見る力を持っていた。また、簡単な思念を他人に送ったり、目の前にあるものを錯覚させることもできた。
だが、その強大な能力は、ショコラを孤立させる原因にもなった。学校に通うことができず、外出も苦手だった彼女にとって、人との関わりは難しかった。それでも、母の会社を潰してはならないという使命感がショコラを支えていた。15歳になった時、彼女は会社に入り、自分の得意分野である占いにひたすら没頭した。しかし、占いに集中しているうちに、会社はショコラの知らないところで大きく変わり始めていた。
占いを通じて少しの未来を見ることができても、会社の経営やビジネスの細かい部分は全く理解できなかった。株主として毎月ペーパーで報告は受け取っていたものの、数字や経営方針については何の意味があるのか分からなかった。やがて会社は、利益追求型のブラック企業へと変貌していった。かつては小さな会社で、地道に続けられていた占いビジネスが、今や利益を最優先する企業となり、社員たちの状況も厳しくなっていた。
その頃、Aという男が会社の面接に来ることになった。面接はショコラが担当せざるを得なかったが、直接人と会うのが苦手な彼女は、幻視能力を駆使して対応した。しかし、彼を見た瞬間、ショコラは驚愕した。Aのチャクラは他の人間とは明らかに異なっていた。それはまるで塔のように頭の上にそびえ立っており、彼のオーラはどこか諦めを感じさせるものの、同時に何か大きなものを受け入れる器のようなものが感じられた。この男なら、何かを変えられるかもしれない――ショコラはそう直感した。
母の残留思念を依代にして、ショコラはAとの面接を進めた。Aは予想通り、何でも受け入れるような器の持ち主であり、ショコラの計画に沿った行動をとっていた。ショコラは母の思念の力で、Aにタイムリープの能力を貸し与えることを決めた。
しかし、事態が大きく変わったのは、中村という男が現れてからだった。
中村のオーラは赤黒く、獣のような臭いがショコラの鼻を刺激した。その不吉なオーラに、ショコラは危機感を抱いた。この男が会社に関わることで、全てが崩れてしまうのではないかと。ショコラはAにその危険を感じさせようとしたが、彼には届かなかった。もう何もできない――そう思った瞬間、ショコラは内心で叫んだ。
助けて――
――その声はAの頭の中に響き渡った。一度で、ショコラの声だと彼は理解した。母親の会社が崩壊してしまう、ショコラの切実な願いがAの心に訴えかけたのだ。
「お母さんの会社がなくなっちゃう。助けて……」
Aは全てを悟った。傷に手を触れ、一心に祈る。間もなくAは光に包まれ、霧のように姿を消した。
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