第6話
「なに、してるの?」
うずくまっていた優樹の耳に、高音の、かわいらしい声が聞こえた。
優樹はチラリと頭を上げた。
──立っていたのは、
「キミ、いじめっ子?」
「あ、逃げる──」
「これ以上は、キミが怖い思いするから、もう大丈夫」
優樹が制止すると、
すぐさま優樹は
ドクン、と優樹の心臓が脈打つ。
初めて間近で見る
それに加え、見た目からは想像できない、大胆な行動力を備えていることを知った。
「──頭、打ってない?」
無自覚であった恋心を伴う淡い憧れは、この瞬間、優樹の中で明確な恋愛感情に変化した。
◇
「神園高校を受験するの? 私もだよ!」
「えっ、ホントに!?」
「学校が終わってから塾が始まるまで時間あるから、いつもは学校の図書館で勉強してるんだけど、よかったらこれから一緒に勉強しない?」
初めて話して少ししか経っていないというのに、
「せっかく同じ高校を受験するんだったら、絶対一緒に合格したいもん!」
「え……ホントに……?」
舞い上がりそうなほど、嬉しい反面、優樹には
二人が受験する神園高校は偏差値が高く、スポーツの名門でもある。
毎年、受験倍率が高い、難関校だ。ライバルになるということでもあるというのに、
──いくらなんでも、難関である神園高校の受験者全員に言って回るわけではないと思うのだが。
だからといって自分が
──様々と思考を巡らせた後。そうか、と一つの心当たりに行き着く。彼女は人一倍、優しいのだ。
いじめられている自分を見て、同情してくれたのだ。
──誰よりも格好つけたい相手に一番見られたくない姿を
優樹はどうしようもなく、情けなくなった。
──いや、と優樹は考えなおす。
例え、きっかけが同情だとしてもこれをチャンスだと捉えない手はない。
彼女に自分のことを好きになってくれるしかないのだ。
「……ダメ?」
眉を下げ、おずおずと聞いた。
「いや、ううん。一緒に勉強できるなら……僕からもお願いします」
優樹は尻すぼみな返答をかろうじて返した。
「良かった!」
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