第28話 死者の谷
玲二、エリザ、セリーヌの三人は、魔王を封じるために必要な「古代の魔晶石」を探して、ようやく「死者の谷」に到着した。その場所は、伝説的な死の地であり、古代の魔物が封印された場所とされていた。
谷の入口に立つと、そこにはひどく重い空気が漂っていた。風は冷たく、時折、不気味な音が谷の奥から聞こえてくる。空は厚い雲に覆われており、まるで時間が止まっているかのような感覚を三人に与えた。
「ここが……死者の谷か」
玲二は静かに呟きながら、谷の広がりを見渡した。地面には朽ち果てた遺物や無数の骸骨が散らばっており、長い間、誰も近づかないことが伺えた。谷の奥からは、かすかな魔力が漂ってきていたが、それは尋常ではないほど強力なものであった。
「魔力が異常に濃い……これは普通じゃないわ」
セリーヌが魔力を感じ取りながら言葉を漏らした。彼女は魔法の力に敏感であり、この谷に潜む邪悪な気配をすぐに察知した。
「魔物たちが封じられているだけじゃない。何かもっと大きなものが眠っている気がする」
エリザもその場の雰囲気に身を引き締め、剣を握りしめた。
「どんな危険が待ち受けていようと、進むしかない。魔晶石を手に入れなければ、魔王を封じることはできない」
玲二は決意を込めて仲間たちに告げ、谷の奥へと歩みを進めた。
谷に足を踏み入れると、霧が一層濃くなり、視界がどんどん悪くなっていった。地面には無数の骸骨が散らばっており、彼らがかつて命を落とした者たちであることは明らかだった。霧の中からは、時折、呻き声のような音が聞こえてくる。
「これは……ただの谷じゃない。ここは死者たちが今もなおさまよっている場所だわ」
セリーヌは慎重に歩を進めながら、魔法の杖を握りしめ、いつでも魔法を発動できるように準備をしていた。玲二とエリザもそれぞれ武器を構え、何かが起こるのを警戒していた。
「ここには、生きている者が踏み入れるべきではない何かがいる」
玲二は心の中でそう感じた。周囲には何も見えないが、確実に「何か」が彼らを見ている気配があった。
「気をつけろ……いつ何が出てきてもおかしくない」
玲二は冷静に声をかけ、仲間たちに警戒を促した。
突然、谷の霧の中から無数の骸骨兵が姿を現した。彼らは沈黙のまま、玲二たちに向かって武器を振りかざして襲いかかってきた。亡者たちの姿は朽ち果てており、目には生気のない光が宿っていた。
「来たぞ!」
玲二は叫び、すぐに剣を構えて骸骨兵に向かって突進した。彼の剣は一体の骸骨兵を打ち砕いたが、次々と別の骸骨兵が襲いかかってくる。彼らは無限に湧き出してくるように感じた。
「終わりがない……!」
エリザも剣を振るい、必死に骸骨兵を倒していくが、数が多すぎて一向に片付かない。セリーヌは呪文を唱え、強力な魔法で骸骨兵たちを一掃したが、それでも次から次へと亡者たちは立ち上がり、彼らを取り囲む。
「このままじゃ、永遠に続くわ……!」
セリーヌは焦りの声を上げた。亡者たちはただ倒しても立ち上がり、再び戦いを挑んでくる。
「何かがこの亡者たちを操っている……そいつを倒さない限り、終わらない!」
玲二は冷静に状況を分析し、何かを探し始めた。すると、霧の奥に見える黒い影に気づいた。
「奴だ……!」
玲二はその影に向かって突進し、剣を振り下ろした。影の中から現れたのは、亡者たちを操る「死者の王」と呼ばれる存在だった。その姿は巨大で、漆黒の鎧を纏っていた。
「こいつが、全ての元凶か……!」
玲二は死者の王に立ち向かい、激しい戦いを繰り広げた。死者の王は強力な魔力を操り、玲二たちに次々と攻撃を仕掛けてきたが、玲二と仲間たちはそれに負けじと反撃を繰り返した。
「これで終わりだ!」
玲二は全力で剣を振り下ろし、死者の王の胸に一撃を加えた。すると、死者の王はゆっくりと崩れ落ち、亡者たちもその場に倒れ込んでいった。
「やった……!」
エリザが息を整えながら呟き、セリーヌもほっとした表情を浮かべた。これで亡者たちの脅威は去ったが、彼らはまだ谷の奥にある魔晶石を見つける必要があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます