第11話 区選抜練習試合当日

試合当日、晴れ間が広がる中、大田区のサッカーグラウンドには選手たちの熱気が溢れていた。試合は午前10時からの予定で、すでにピッチ上には川崎市選抜の選手たちも姿を見せており、試合の準備が進められていた。悠斗は朝早くから仲間たちとともにグラウンドに到着し、試合に向けたウォームアップを始めていた。


悠斗は、ウォームアップ中に自分の体調やコンディションを確認しながら、チームメイトたちと軽く会話を交わし、緊張をほぐそうとしていた。「今日の試合、絶対に勝とうな。」と、彼は仲間たちに声をかける。仲間たちも、彼の言葉に力をもらい、頑張ろうという気持ちを新たにしていた。


試合開始のホイッスルが鳴り響くと、選手たちは一斉にピッチに飛び出し、ゲームがスタートした。大田区選抜は、初めのうちは積極的にボールを保持し、川崎市選抜のディフェンスラインを崩そうと試みた。悠斗は中盤でボールを受けると、素早く視野を広げて前方のスペースを探し、パスを展開していた。


前半15分、大田区選抜は攻撃のリズムを作り出し、悠斗が左サイドでボールを持った際に、相手ディフェンスを巧みにかわし、中央にクロスボールを送り込んだ。中で待っていたフォワードが頭で合わせるも、川崎市選抜のゴールキーパーが驚異的なセーブを見せ、得点には結びつかなかった。このプレーは、チームに勢いを与え、攻撃のチャンスをさらに増やすきっかけとなった。


その後も、試合は膠着状態が続いた。川崎市選抜は速いカウンター攻撃を仕掛け、大田区選抜の守備ラインはそれに対応するのに苦労していた。悠斗は自陣に戻り、ディフェンスのサポートにも力を入れた。特に、相手の速い攻撃に対して、悠斗のポジショニングとインターセプトが目立ち、チームの守備を支えていた。


前半30分、川崎市選抜が右サイドから攻撃を仕掛け、クロスボールを上げた。中央で合わせたボールがゴールネットに突き刺さり、川崎市選抜が先制点を挙げる。大田区選抜の選手たちは一瞬のショックに見舞われたが、すぐに気持ちを切り替え、反撃に出た。


後半に入ると、大田区選抜は攻撃のギアを上げ、川崎市選抜のゴールに迫ろうとする。悠斗はさらに積極的にプレーし、左サイドから再びクロスを上げる。中で待っていたフォワードが頭で合わせたが、再び相手キーパーに阻まれ、得点には至らなかった。選手たちの焦りが募る中、悠斗は冷静にプレーを続け、チームメイトたちに励ましの言葉をかけていた。


試合の終盤、大田区選抜はさらに攻撃のスピードを上げ、川崎市選抜のゴールに迫るも、最後の最後で得点には至らなかった。試合終了のホイッスルが鳴り響くと、スコアボードには川崎市選抜の1-0の勝利が表示されていた。選手たちは悔しさを胸に抱えながらも、試合での経験と学びを次に生かす決意を新たにした。


試合後、コーチは選手たちに声をかけた。「今日は良い試合だったが、勝ちきれなかった。次に向けては、もっと精度を高め、連携を強化する必要がある。各自、反省点を見つけて次に生かそう。」コーチの言葉に、選手たちは真剣に耳を傾け、次のステップへの準備を始めた。


悠斗は試合を振り返り、個々のプレーやチームの戦術について深く考えた。彼は自分のプレーのどこが良かったのか、どこに課題があったのかを分析し、次の試合に向けた具体的な改善策を考えた。試合の結果は悔しかったが、その悔しさをバネにして成長し、次に向けての準備を進める決意を固めていた。

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