砕けた思いを再び拳に
アソビマン
プロローグ 折れた翼
「さあ、アディショナルタイム残りわずか、スコアは2対2!このまま引き分けか、それとも奇跡が起こるのか…!おっと、ここで日本代表エース、佐久間翔太がボールを奪った!」
「ハーフラインから一気に駆け上がる!スピードが違う、相手選手を次々とかわしていく!1人、2人、3人、止められない!まだ佐久間だ!」
「ペナルティエリアに突入、ラストチャンス!シュートォーーッ!!ゴーーール!!!佐久間翔太が決めたぁ!信じられないソロプレーで日本が劇的なリードを奪いました!これがエースの力だ!!」
サッカーワールドカップ準々決勝、日本チームに対するはドイツチーム。
前評判で日本は100%負けると言われていたが、3-2というスコアで日本の奇跡的逆転。
この試合に幼いながらも4歳の俺、轟大吾(とどろき だいご)も感動を覚え父親にサッカーを習わせて貰えるように頼み込んだのだった。
どうやら同じ試合を見たのか俺が初めてサッカースクールで教えてもらう時には、数十人の幼児がいた。
「じゃあ大吾、君には相手を抜き去るテクニックを教えよう。」
その中でも才能があったのか教えられたことはすぐに一通りできるようになり、同時並行で個人技術を磨く時間ができた。
「うまいじゃないか大吾。いつの間に練習していたんだ」
これがどうやら俺の性格に会っていたのか、暇さえあればコツコツと自主練に励んでいた。
「よし。このフェイントが確実にできるようになれば戦える状況が増える」
「相手が右に動く時の対応はこうして、左に動くのならこう」
時には圧倒的な技術で相手を抜き、また時には未来が見えているかの様に相手の対応をした。
そしていつしか俺は世代ナンバーワンプレイヤーと呼ばれる様になっていた。
時は流れ中学生になり、俺のチームは全国制覇し、メンバーのほとんどが強豪校に進学することが決まっていた。
しかしサッカー練習の手を抜くことはできない。
高校に入ったらもっとうまい上級生がいるに決まっている。
体格でも優れた選手にも勝つ練習は怠れない。
「よし今日の練習はここまで、お前らもありがとうな」
チームメイトとも別れ自転車に乗り帰宅する。
横断歩道で止まり考え事をする。
「中学レベルで満足していてはダメだ。これから伸びてくる選手もいるだろうし明日はもう少し長く練習しよう。」
気付くと周りの歩行者が歩き始めていた。
一度頭をリセットさせるためにペダルを踏む。
中程まで進んだ瞬間、猛スピードで迫るトラックが目に映る。
時間がゆっくりと流れるように感じる。
やばい、ぶつかる。
だが体は動かない。
手を動かすことも足を動かすこともできない。
ふと視線を運転手に向ける。
手を心臓に当てて苦しんでいる。
ああ、神様はなんて残酷なんだ。
鈍い音とともに、自転車が宙に舞った。
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