情報屋
アランがニウブルフでのんびりと日々を過ごしていたある日、宿に一通の手紙が届いた。差出人は旧知の仲で、以前の仕事で世話になっていた情報屋、バートラムだった。手紙には簡潔な文面で、「ニウブルフで君を見かけた。頼みたいことがある。もし引き受けてくれるなら、明日酒場『ハンデル』に来てほしい」と記されていた。アランは手紙を手にしながら、バートラムのことを思い返していた。彼とは多くの情報を交換し合い、仕事上の信頼も厚い関係だった。今回の依頼も、何か重要な案件かもしれない。
「久々にバートラムと話す機会ができたな…」
アランは手紙をポケットにしまい、情報屋に会うことにした。
翌日、アランが酒場に入ると、そこには懐かしい顔が座っていた。彼は変わらず気さくに笑い、アランに向かって手を振った。
「おお、久しぶりだな!元気にしてたか?相変わらずだな、アラン。」と、まるで昨日も会っていたかのように挨拶してきた。
バートラムは席を勧めながら続けた。
「それにしても、こうやって会うのはどれくらいぶりだ?前に一緒にやった東の魔獣退治のとき以来か?」
アランも椅子に腰を下ろし、彼との久しぶりの再会に微笑みながら応じた。
アランとバートラムがしばらく近況を語り合った後、バートラムは少し声を落とし、真剣な表情で本題に入った。
「実は、あるものをノトスのとある貴族に届けてほしいんだ。詳しい内容は依頼を引き受けてくれるまで言えないが、少し事情があってな。かなり重要なものなんだよ。近頃、ノトス国内が不安定なのは知ってるだろ?その状況に関わる大事な荷物なんだ。」
アランはその言葉を聞きながら、依頼の背景に何か重大な事情があることを感じ取った。情報屋の語る内容は明らかにデリケートなもので、慎重に考えなければならない依頼だということが伝わってきた。
アランはバートラムの話をしっかりと聞き、その重大さを理解した上で、静かに頷いた。
「分かった。その依頼、引き受けよう。」
バートラムは安心したように微笑み、軽く肩を叩いた。
「ありがとう、アラン。君なら安心だ。では詳細を伝える。」
情報屋はアランが依頼を引き受けたことを確認すると、少し声を低くして詳しい内容を話し始めた。
「実は、今回届けてほしいのはこの特殊な魔道具だ。見た目はただの拡大鏡だが、魔法を介すことで中にある重要な情報を引き出すことができる。情報の内容は、ここニウブルフでのノトス軍の取引に関する記録だ。それがノトスの貴族、フリーデンリート家に渡る必要があるんだ。この情報はノトス内の強硬派のクーデターを抑える強力な証拠になり得る。」
アランは真剣な表情で耳を傾けた。バートラムは続ける。
「届け先は、フリーデンリート家の館だ。館に着いたら『人形の修理道具を届けに来た。』と言えば向こうに伝わるだろう。厄介な旅になるかもしれないが、君なら大丈夫だと信じている。」
アランはバートラムの話をしっかりと受け止め、静かに頷いた。
バートラムは、依頼の話を終えた後、少し苦笑いを浮かべて愚痴をこぼした。
「東は魔獣で手一杯だってのに、西では人同士で争う暇があるんだから、まったく良い身分だよな。こっちは必死に生き残る手段を探してるってのに。」
その言葉には疲れがにじんでいたが、皮肉を交えつつも真剣な思いが感じられた。
アランは情報屋の愚痴を聞きながらも、笑みを浮かべて軽く頷いた。任務の重大さを感じつつ、彼はその言葉に重さを覚えながら、次の行動を胸に決めた。
「じゃあ、これで俺は行くよ。依頼は任せてくれ。」
そう言ってアランは酒場を後にした。街の灯が静かに揺れ、夜風が冷たく肌を撫でる中、アランは依頼に備え、足早に歩き出した。
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