オースチアの首都 ニウブルフ
魔導書の輸送
翌朝、アランは次の行き先を決めるためにヴェースへ向かっていた。街の通りはまだ静かで、前日のフードフェスの余韻が街に漂っていた。アランは新しい仕事を探すつもりでいたが、その途中でふと店先に立ち尽くしている一人の少年に目が留まった。
その少年は貴族の子どものようで、立派な服を着ていたが、何か困っている様子で、手には見慣れない魔導書を握りしめていた。アランが通り過ぎようとしたとき、少年はアランに気づき、急いで声をかけてきた。
「お兄さん!魔導運送士だよね。ちょっとお願いがあるんだけど…」
アランは立ち止まり、少年のもとへ歩み寄る。
「どうしたんだ?困っているようだが。」
少年は小声で話し始めた。
「実は、父上に内緒でこの魔導書を買ったんだけど、どうやって寮に持ち帰るか悩んでて…もし父上に見つかったら怒られるし、どうしたらいいかわからないんだ。」
アランは少年が手にしている魔導書をちらりと見た。それは異国から輸入されたもので、表紙には不思議な文様が刻まれていた。少年はそれを大切そうに抱えながら、アランを見上げて頼むように続けた。
「お願いだから、この魔導書を首都の学生寮まで運んでくれない?僕が寮に戻るときに、こっそり受け取れるようにしてほしいんだ。」
アランは少年の頼みを聞きながら少し考え込んだ。この依頼は確かに親にバレたくない理由があるものの、特に怪しいものではなさそうだった。フリシータでの稼ぎも悪くなく、彼は少年の願いに応えることに決め、静かに頷いた。
「わかった、首都の学生寮まで届ければいいんだな。任せてくれ。」
少年は嬉しそうに目を輝かせ、アランに感謝の言葉を述べた。
「ありがとう!本当に助かるよ。僕は自分で寮に戻るけど、魔導書はお兄さんにお願いするね。」
こうしてアランは、少年の魔導書を首都「二ウブルフ」まで運ぶ依頼を引き受けた。次の目的地が決まり、アランはフリシータを旅立った。
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