魔導運送士

フードフェス

　フードフェス当日、アランたちは無事に任務を終え、休息を取るために街へ繰り出していた。フリシータの街は、まさに活気に満ち溢れていた。通りには色とりどりの旗がはためき、木製の屋台が所狭しと並んでいる。市民や観光客たちがひっきりなしに通りを歩き、笑顔と楽しげな声が街中に響き渡っていた。

　道端には、各地から運ばれてきた新鮮な食材を使った料理がずらりと並んでいた。大きな鍋で煮込まれたスープや、豪快に焼かれた肉の香りが通りを埋め尽くし、訪れる人々の食欲をそそっていた。パン屋では焼きたてのパンが山積みにされ、その香ばしい匂いが漂っていた。

「熟成されたチーズとパンはいかがですか！フリシータでしか味わえない特製のチーズパンです！」

「アレカンシアから運ばれてきたスパイスを使った料理です！一口食べたら忘れられない味ですよ！」

　あっちこっちで腕自慢の料理人の声が飛び交っている。屋台には、地元の特産品であるチーズやハム、アレカンシアの新鮮な果物や野菜を使った料理が特に目立っていた。薄くスライスされたチーズが美しい盛り付けで並び、その横には、ハムを薄く切って並べたプレートがあった。どれも手が込んだもので、一口食べれば、素材の鮮度と味わいが伝わるほどだ。

　町中が多種多様な料理に溢れている。巨大な鍋で煮込まれたシチューや、地元で捕れた魚を炭火で焼き上げたもの、さらにはアレカンシア名産のスパイスをふんだんに使ったスープなどが並んでいる。甘い香りが漂う屋台では、焼き菓子やタルト、シロップをかけたフルーツが所狭しと並べられ、人々が次々に手を伸ばしていた。その中でアランが以前食べたフローズンシルクタルトは一際人気を集めていた。

　通りを歩く人々は実に多様だった。街の住人は家族連れで屋台を巡り、子供たちは楽しげに駆け回っていた。地元の職人や商人も、普段の仕事を一時中断し、祭りの雰囲気を楽しみながら軽く飲み物を片手に笑い合っている。

　一方で、旅人たちは異国の衣装を纏い、その土地特有の風貌で目を引いていた。彼らはこのフードフェスの噂を聞きつけ、遠方から訪れたのだろう。各国の言葉が飛び交い、時折、珍しい食材や料理に驚きの声を上げていた。旅人たちは地元の文化を存分に楽しみ、特にフリシータの名物料理に興味津々の様子だった。

　さらに、貴族たちの姿も祭りの中でひと際目立っていた。豪華な衣装をまとい、上品な所作で歩く彼らは、一般市民や旅人たちとは違う存在感を放っていた。貴族たちは身の回りの使用人に料理を運ばせたり、あるいは自ら食べ物を吟味したりしながら、この特別な日を楽しんでいる。時折、商人と貴族の間で商談らしき光景も見られ、祭りの雰囲気に乗じて新たな取引が成立することもあるようだった。

　そんな中をベルタが目を輝かせて、屋台の方へ駆けていく。

「わあ、すごい！ここには美味しそうな料理がたくさんあるじゃない！さっそく何か食べましょう！」

　エデルが笑いながら彼女を追いかける。

「まったく、フェスティバルが始まるといつもテンションが上がるんだから。まあ、せっかくだし楽しむとするか。」

　ノアは静かに周りを見渡しながら、少し遠慮がちな様子だったが、街の賑やかな雰囲気に少しずつ和らいでいった。アランも街の喧騒の中で、肩の力を抜き、リラックスした様子を見せていた。

「いやぁ、これだけ盛り上がっていると、なんだか任務の疲れも吹き飛ぶな。せっかくだから何か食べようか。」

　アランが笑いながら言うと、ベルタがすぐに応じた。

「もちろんよ！見て、この屋台の料理、全部美味しそうだし！」

　彼女はすぐに地元の名物料理や、アレカンシアから輸送されてきた食材を使った料理を楽しみ始めた。ノアも、ベルタの元気につられるように小さく笑い、少しずつ手を伸ばしていた。

　エデルは屋台で出されるチーズや肉料理を手にしながら、「こうして食べると、任務の後の達成感がより一層増すな」と満足げに言った。

　アランたちは食べ物や飲み物を楽しみながら、街中を歩き回り、様々な料理やお菓子を堪能した。フェスの盛り上がりに合わせて、音楽や踊りも始まり、彼らも自然とその雰囲気に引き込まれていった。

「このフードフェスティバル、やっぱり素晴らしいね。こんなに美味しい料理を一度に楽しめる機会は滅多にないし、街の雰囲気も最高だ。」

　アランは美味しい料理を味わいながら、しばしの平和を楽しんだ。任務の緊張感が解け、新たな友人たちとの楽しい時間が、彼にとって何よりも嬉しいひとときとなった。