望みが果てに

@desifall

日常

コツコツと足音が迫ってく。急ぐ歩調ではなく、確実に敵を追い詰めるような力のある足音だ。

「はぁっ…はぁ」血に濡れた服を着た男は相貌を恐怖に歪めつつ懸命に足を動かす。呼吸が上手く出来ないのか先ほどから酷いリズムだ。逃げるように廊下の角を曲がるが、前方は壁であった。震える体をどうにか御し壁に背を預け銃を構える。

「ふぅっふぅっ…はー」深く呼吸をする。標準を角に向ける。出てきた瞬間を狙い、仕留めるのが狙いなのだろう。

スッと影が視界に入った瞬間、緊張が溢れたように引き金を引く、マズルフラッシュと反動で五感が痺れ視界が曇る。忙しなくトリガーを引こうと再び指先に力を入れるが視界が急速に横へと流れる。強い衝撃、何が起きたか理解できないまま本能が緊急事態だと騒ぐ。

再び衝撃。「かはっ…」肺から空気が漏れ、呻く。慌てて空気を取り込もうと口を開くが同時に異物が押し込まれる。嫌な感触だ、金属の塊のようなものだと直感した瞬間男はすぐにそれが自分を殺すためのものだと理解してしまった。

スーツの男の顔が目に映る、この男が今まさに自分を殺そうとしているのだ。

まごつく口で「やへ…を」と言葉にならない命乞いをするが、気にした様子もなく、スーツの男は胸を膝で踏みつけてき呟く

「これで最後」

そのまま発砲。

血が散乱しスーツの男の服を汚した。

スーツの男は死体となった男から距離をよると、確認するように声に出す

「これで全員か、はぁ…面倒だな」言い終わると男は目を閉じ、立ち尽くす。十分な時間がたった後、目を開いた。

男は深く呼吸をすると元来た道を引き返す。道中夥しいほどの血と肉片が転がっていた、原型を留めたものから人である事すら判別つかない肉塊まで、そんな中を男は気にする様子もなく歩を進めた。





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