ネオンライトカレイドスコープ ~VRSNSを記録するあたしと無言勢の関係について~

翡翠波瑠

プロローグ

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 仮想世界は、一六七七万色ネオンライト万華鏡カレイドスコープ


 さあ、虹色に光る液晶画面を覗き込んで。


 メールアドレスを登録して。


 出来上がったアカウントでログインして。


 きれいな服と身体をアップロードして。


 パソコンがエラーを吐いた?


 それはまあ、御愛嬌。


 準備ができたら、いろんな夢を見に行こう。たくさんの人に会いに行こう。


 この夢では、誰もが好きな姿を選べる。


 でも気を付けて。


 この夢では、魂の美醜が残酷なまでに明らかになってしまうから。


 あなたの性格はごまかせない。


 あなたの嫌いはごまかせない。


 あなたの言葉は、ごまかせない。


 これから話すことは、あたしにとっては過ぎたことだけど。


 これからここを訪れるあなたにとっては、少し先で起こることかもしれない。


 百数十メガバイトぶんのワールドのダウンロードが終わると、万華鏡HMDの暗転を抜け、あたしは待ち合わせ先の夢へと降り立った。


 開けた視界を見渡すと、背後からか細い、今にも消えそうな女の子の声が届く。


「こ、こんにちは」


「はい、こんにちは。素敵な髪色ですね」


 あいさつは大事。


 第一印象は大事。


 ここでの人間関係は、現実世界と大きく変わらない。


 だけど。


 あたしたちの暮らすVRSNSの世界は、時として現実世界よりも早く劣化して、消えていく。


 万華鏡のようにきらめいて、同じ景色は二度とない。


 だからあたしたちはこの世界で記者をやる。


 永遠に残る風景なんてないから。


 目の前にいる人がずっとそばにいる保証なんてないから。


 ある日突然、世界が丸ごと泡のように消えてしまうかもしれないから。


 自分の足で歩いて、言葉を交わして、記録するんだ。


「はじめまして。不眠通信社です」


 あたしは腰をかがめて、車椅子に座る青い髪の少女と視線を合わせ、名刺を差し出した。


「あんたの話を、聞かせてくれないかな?」

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