第50話 旧友
更新が遅れまして申し訳ありません。
リアルの忙しい時期と、先日の体調不良が重なってしまいました。
ーーーーー
ハネリウス伯爵領は、セレビュア王国の北西に位置する国内有数の穀倉地帯だ。
また、王都より寒い気候である。
真冬なら1日通して気温は1桁になるし、たまには雪も降る。
だがそれだけだ。
実は、王国自体温暖な気候で、伯爵領は現代日本の太平洋側と似た気候なのである。
ハイカル子爵ケイリーが自宅を出たのは3日前。
前日に王都に到着し、彼が泊まったのは伯爵家別邸だ。
伯爵家長女レオノーラと彼の娘ロイリーが住んでいる場所である。
今日2の鐘が鳴ったころ、少女たちに見送られてまた馬車に乗り込んだ。
彼は、国王ジークハインツと会ったときのことを思い出していた。
当時、ジークハインツはまだ王子だった。
関わったのは、王子が学院2年生……つまりケイリーとフラリアーノが最終学年5年生のときである。
この世界の学校にも自治組織・生徒会がある。貴族たちに人を治めることを経験させるためだ。
生徒会に入りたいと執務室にやってきたのが第1王子であった。
それを許可したのが、会長だった3大公爵の一角ヴェンタール公爵令嬢と、副会長フラリアーノだった。
その付き添い感覚で、男爵令息ケイリーは庶務を務めていたわけだ。
王子は必要以上にへりくだることを良しとしなかった。ただの下級生だと思って指導してくれと頼んできた。
王子は、ノブレス・オブリージュ_身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある_を体現していた。
下位貴族の彼にも話しかけられたので、彼にとってジークハインツは旧友のように懐かしいのだ。
ジークハインツは成人して間もなく王太子となり、今から数年前に先王の崩御に合わせて即位した。
学院卒業以来顔を合わせていないので、10年以上ぶりの再会となる。
国王と謁見すると事前の通達があっても、実際に謁見の間に通されるまでは長い。
守衛に身分と持ち物を検査されたあと、側仕えや従者用の部屋もついた控え室に案内された。
控え室で四半刻ほどゆっくりしていたら、王宮勤めの侍女がやってきた。ようやく会えるらしい。
幅は広いが無駄な装飾はない、実にあの王子らしい廊下を進んだ。
「陛下、失礼します。ハイカル子爵様がいらっしゃいました」
「入れ」
懐かしい声に顔を上げそうになったが、すぐに下げた。
国王がいらっしゃる玉座から数メートル_剣の間合い_離れたところで、おもむろに跪いた。
「余は第5代セレビュア王国国王ジークハインツ・ガーゼン・セレビュアーティーである。直答を許す。面を上げよ」
国王ジークハインツはあの頃より幾分シワが増えたように見える。
でも臣民を見守る眼差しは少しも変わっていなかった。
「ハイカル男爵当主ケイリーと申します。陛下に拝謁できること、大変嬉しく思います」
彼がなぜ男爵と名乗ったかというと、これは単なる配慮である。
全貴族に向かって君主たる国王がハイカル家の陞爵を通告したのだから、彼らは子爵と名乗ってもいい。
だが、彼は国王に勅令状をいただくまでは男爵だと思い、こういう対応を選んだ。
国王も理解したようで、壇上の君はうなずいた。
「本題に入る。卿自身とご息女の功績を認めて子爵へ陞爵させる。これがその勅令状だ。受け取るがよい」
控えていた侍従の手を通って、ケイリーは勅令を受け取った。
「身に余るこの名誉、ハイカル家の末代まで語り継がれるでしょう」
ジークハインツはニヤリと笑って言った。
「それでこの茶番、どこで終わらせればよい」
「まあ、やらなければならないことは済ませましたし、いいのではないでしょうか」
緩めた言葉遣いで返した彼は、そこの侍従が許すなら、と心の中で付け足した。
「学院で世話になった先輩にこのような偉そうな態度はよくないと思っていたのだが」
「そのように思っていただけて嬉しいです、陛下。お気持ちだけ受け取っておきます」
「ああそうしてくれ」
ジークハインツは頬杖をついた。
「それで其方のご息女のことを聞かせてくれないか」
「王子殿下と王女殿下のお話も聞かせてくださるのでしたら」
国王の子どもは2人。
長男のサリナルアレン王子は、ロイリーの同い年で学院1年生である。
長女のカリンローネ王女は、カイレーの2つ下で3歳である。
「……ローネはともかくアレンは愚痴になっても知らないぞ?」
「私も愚痴っぽくなるやもしれません」
「誰も気にせん、そんなこと。では其方からだ」
ケイリーはうなずいて話し始めた。
まず、ジークハインツが気になるであろう次女ミュラーからだ。
あの騒動の前後譚を聞かせたら興味深そうに相づちを打っていた。
さすが其方の娘だ、大変賢いとのことである。
そしてフラリアーノが嫌われていると話すと、理由を問う間も笑っていた。
「其方の長女はアレンと同い年だろう? 仲良くしているといいな」
「その可能性は薄いかと思いますが。陛下と生徒会で一緒だったことは言っておりません故」
言ったとしても、ロイリーが王子に業務連絡以外で話す姿が思い浮かばなかった。
お互いの父親の話などしないだろう。
「なぜ言わなかったんだ?」
「彼女にとってはプレッシャーですので。身分差が大きすぎるのです」
ロイリーの性格を分析した的確な対応であった。
また、ミュラーにも言わないつもりでいた。
「ふーん、其方も父親をしているのだな。勉強になる」
「なにをおっしゃっているのですか」
その後も思い出を振り返りながら、国王陛下と子爵様は楽しいときをすごした。
ーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
いいねもお願いします。
※本編とは関係ありませんが、事前にご連絡いたします。
ミュラーやロイリー、ケイリーがやっているorやろうとしている侍従侍女ですが、仕事を鑑みると“従者”のほうが近いのではないかと思いまして。
0章から順次変えていきます。
2章完結まであと1話
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます