君は陽炎

倉木 友

出会いの日

 高校一年生の夏休みのある日のことだった。私は友達たちに誘われて地域の祭りに来ていた。たくさんの人がいて当たり前のように私は友達とはぐれた。宛もなくさまよい歩いていたそんなとき君に出会った。今にも消えてしまいそうな儚いオーラを纏った君は私より一つ上だと言った。でも、信じられなかった。あまりに達観しすぎているように感じたから。疑惑を押し込み帰り道を訪ねてみた。すると、君はすぐに元いたところまで連れてきてくれた。私は無事に友達と合流でき、お礼を言おうと思って振り返ってみたら君はいなくなっていた。せめて一言だけでもお礼を言いたくて、翌日もそのまた次の日も出会った場所に行ってみた。一週間ほど通い続けたある日、君はそこにいた。出会ったときと何ら変わりのない様子でぽつんと佇んでいた。私はあの日のお礼を言おうと思って声をかけた。すると君はまるで私が言おうとしていたことをわかっていたかのように「いいよ。別に。あたり前のことをしただけだから。」と言った。私はそんなに顔に出ていただろうかと不思議に思ったがきちんと自分の口からお礼を言ってその日は帰った。

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